引越願望

 
 現在の店舗とすぐ近くにある住まいは、30年近くお借りして使ってきました。子育てはここですると決めていましたが、その子育ても終わり、次のことを考える時期になりました。

 具体的には、自分が50代のうちにここから別の場所に引っ越したいと思っています。2024年頃までにと言うことになります。まだ行き先はどことも決めていませんが、どこかにいい場所が見つかれば、その時に引っ越したいと思います。便利な街の中心部で長く過ごして来ましたが、次の場所はどのような所になるのか楽しみです。
 
 思えば、中学校の頃に「ウッディライフ」 と言う本が創刊されて、その本の中で紹介される世界に憧れました。田舎で物づくりをする生活を思い描き、物づくりの人間が集まった小規模コミュニティをつくるようなことを想像していました。秋田は人口減少と過疎化で、将来はいち早く不動産も安くなりお金を掛けずにいろいろできるはずだと、家のデザインや自家発電設備など、妄想を繰り広げていました。
 
 最初は竹か木を素材にした物づくりをしたいと思っていたのですが、いくつかの出会いがあって、素材として選んだのは革でした。いろいろあって、田舎暮らしというスタイルにはならず、街の中で暮らしてきましたが、予測されていたとおりに人口減少・過疎化などは年とともに進んで来ました。
 
 長く街の中心部で暮らしてきたので、いきなり山奥ような所に引越しするのは難しいと思いますが、どこかにお金をあまり掛けずに移動できる所を見つけたいと思います。何せ、借金も無いけど貯金も無いという、プラスマイナスゼロの人間なので、お金のかかるところには移転できませんが、引っ越しする先は、今の事業内容を継続できるような場所でありたいと思います。
 
 仕事用の荷物も多く、ミシンコレクションなどもあり、そういった物を有効に使うことができて、事業内容も継続できる場所という、広さや立地の条件の合う物件が都合よくあるのか、不安も様々にありますが、何か良い情報がありましたら教えていただきたいとも思います。
 
 「笑う門には福来たる」とか「果報は寝て待て」など、日本には「待ち」のことわざなどもありますし、そのうちきっとどこかいい場所と出会えるはずだと考えています。引っ越す先は秋田市内が良いとは思っていますが、秋田市以外も含めて柔軟に考えていきたいと思います。
 
 現在、当工房と教室をご利用の皆様には、引き続きご利用いただくことができるような、できる限りご迷惑をかけないような形にしたいと考えております。
 
 昭和のミシンのコレクションの一部です。
ミニ博物館ができるくらいあります。
できればこれを持って引っ越したいのですが、
これはなかなかたいへんそうです!


 現在の場所は、街の中心部のわりには落ち着いた雰囲気のある所で、昔の久保田城の城郭の中にあたる場所です。以前は、店舗の目の前は城跡の土塁で緑のある風景でした。でも、新たな文化ホール(あきた芸術劇場)建設のために、土塁はすでに削られて無くなってしまいました。非常に珍しい構造を持つ土塁だったのですが、残念なことでした。
 
 今後は、同じく店舗の目の前の風情のある石垣も無くなり、コンクリートの壁になります。その上は新たな文化ホールへの荷物搬入の大型車の切り返しスペースになります。駐車場への車両の通り道にもなります。新たなホールの建物は前の県民会館よりも間近に建てられており、建築途中からすでに圧迫感も感じておりますので、この場所はずいぶん環境が変わります。
 
 また、新たな文化ホール向かいにある昔の県立美術館は、秋田市文化創造館と言う施設になり、こちらではアートによるまちづくり活動に携わる秋田公立美大の NPO法人「アーツセンターあきた」が、施設の運営にあたります。市役所と美大が進めるアートによる街の活性化と魅力づくりの一環だと思います。この一帯は、秋田市が「芸術文化ゾーン」としている地域ですので、今後ますます、秋田市はアートや芸術や文化をキーワードにした活動を、この地域で広げる方向にあるのだろうと思います。
 
 官製の色合いが濃く感じられる形でスタートする、アートをキーワードにした施設と活動が、今後どのように展開するのか私にはよくわかりません。新たな施設のテーマである、新しい価値の創造や文化の創造の意味もわからないのですが、そのうち少しずつ形になって行くのでしょう。できることならば、この地域この土地が持つ固有の価値とも正面から向き合って、この地域で活動する意味のある内容も探っていただきたいと思います。これからこの場所で永く過ごして初めてわかってくることも、きっとあるだろうと思います。
 
 すぐ近くには、街の再開発施設が複数集まって構成されている、「なかいち」と言う一角が2012年に造られています。ここも芸術文化で街を活性化することがテーマでしたが、開設当初から低迷しています。この「なかいち」の内容や運営状態を見て、私なりにややネガティブに思うことがいろいろとありました。でもおそらく、まだまだ時間がかかるかもしれませんが、多くの予算がかけられて多くの人が中心市街地の再活性化に力を注いでおりますので、今までとは違う新たな形で街の魅力が形成されていくことでしょう。
 
 秋田駅前周辺では新たな施設が複数造られて、再開発の動きも具体化してきておりますので、中心市街地はまた少しずつ良くなっていくかもしれません。国のまちづくりの指針でもある「コンパクトシティ」というキーワードもありますので、中心市街地回帰の動きが、将来的に明確になってくると良いのですが、外旭川の開発にあたり「モデルシティ」という新たな言葉を秋田市は使い始めましたので、果たしてどうなりますか。
 
 いまこの場所では様々な変化があり、住み慣れた環境もだいぶ変わることになりますので、この場所を離れることを検討するには、ちょうどいいタイミングなのかなと思っています。 
 
 ここは、空が狭く感じる場所だったので、次はもっと空が広く感じられる所に移転したいと思っています。

(2020年11月)