2025/05/13

移転後の一部営業再開

 

 秋田市河辺に移転して、一部の営業を再開しました。材料販売と教室レッスンの再開です。移転再開後は、金曜日と土曜日に営業します。まだまだ整備の途中と言った感じですが、新たな活動をどうぞよろしくお願いいたします。
 
 前は中心市街地で営業していましたが、今度は農村部の小さな集落の中に移転しましたので、いままでにも増して、スローな営業をしてまいります。営業日を縮小してご不便をお掛けしますが、この場所ならではの心地よい空間を提供するつもりでおります。今度の店舗は、土足ではなくスリッパに履き替えていただいての入店となりますので、よろしくお願いいたします。
 
 私の工房部分は、まだ混乱を極めていて、足の踏み場も無い状態です。物が多すぎて、整理にはもう少し時間が掛かりそうです。新工房の様々な全ての面が整うのは7月か8月頃になると思いますが、頑張りすぎて準備で燃え尽きてしまわないように、無理せず整えていくつもりです。
 
【新店舗所在地】
〒019-2612
秋田県秋田市河辺畑谷字丸山332
電話:018-831-3286
メール:tuzie-craft◯あっと印◯asahinet.jp
(「◯あっと印◯」を「@」に変更しメールの宛先としてください。)
 
 

2025/04/01

矢留町の店舗:閉業

2025年3月31日の営業を最後に、 
千秋矢留町の店舗は閉店いたしました。
 
長年のご愛顧ありがとうございました。
心から感謝申し上げます。 

このブログで何度か書いてきた
郊外の市街化調整区域に引っ越します。
引越願望がようやく叶います。
 
今後については
また改めて報告させていただきますが、
引き続きよろしくお願いいたします。
 
2025.04.01
−TUZIE−

2024/12/05

熊1頭の駆除から、全国の野生動物の駆除も少し考えてみる(2025.01.13加筆)

 
 
 画像は、熊の革の漉き落としの床を集めて固めものです。
無駄にせずに形にしたいという思いがあります。
 
 東北ではツキノワグマの生息数が多く、近年は熊に関したニュースが多くなりました。私の住む秋田は熊による人身被害が近年多発しており、市街地に出た熊の駆除が全国ニュースになることも何度かありました。
 
 街中に出没する熊が増えましたが、たとえ街中での銃の発砲を認める法改正が行われても、街の中で簡単に銃猟ができるわけではありません。跳弾・撃ち損じ・設備の破壊・熊の反撃や暴威など、 様々なリスクが伴います。簡単な解決法も対処法も無いのだと思います。
 
 慎重にことを進めて駆除するしかない現実の中で、地元の関係者は街に現れた熊に対して堅実な対応をしていると思います。
 
 ですが、ごく一部の方からだと思いますが、熊の駆除に対して苦情の電話やメールが寄せられることもまた、そのたびにニュースになっています。苦情を寄せる人の思考法や心理がどのようなものなのか理解できませんが、駆除は当然のことだと私は思いますし、同様に駆除を当然と考える方も多いと思います。
 
 突発的な熊の出没に対応するだけでも大変ですし、目先の駆除だけではなく今後さまざまに考え対応していかなくてはならないことが山ほどある中で、自治体の担当者などが困らないように、わざわざ遠方からの苦情は控えていただけないものかと思います。
 
 熊の捕殺数は、例年全国で数千頭規模です。熊の出没が過去に例を見ないくらいに多かった令和5年度でも、北海道のヒグマを合わせても1万頭を超えてはいません。
 
 野生動物で捕殺数が多いものには、イノシシとニホンシカがあります。害獣駆除や生息数の調整のために捕獲されるイノシシは、例年40万頭以上にのぼり、狩猟による捕獲も合わせると全国で毎年50万頭以上のイノシシが捕獲されています。また、害獣駆除や生息数の調整のために捕獲されるニホンシカは、例年50万頭以上で、狩猟も合わせると毎年70万頭以上のニホンシカが捕獲されています。それとは別に北海道のエゾシカも、近年は年間13〜14万頭捕獲されています。
 
 これらの捕獲される野生動物は、ジビエ肉などとしての利活用が必要とされていますが、実際には野生動物の肉の流通は難しく、多くは廃棄されていると思います。捕獲後の野生動物は、焼却か埋設が基本的な処分法です。解体まで手が回らず、そのまま焼却されている場合も多いと思います。
 
 熊の駆除について苦情を寄せる方は、県外に住んでいる方が多いそうです。その人が住む地域は、熊の駆除が少ない地域かもしれませんが、もしかしたらイノシシやニホンシカはたくさん駆除されている地域かもしれません。ニュースにならないほど当たり前に、同じ野生動物の捕殺が行われていないか、一度地元のこともお調べいただければと思います。苦情を寄せられた方の住む県でも、千頭・万頭単位で熊以外の野生動物が駆除されていることもあろうかと思います。遠くの1頭の熊の駆除について考えることが、お近くの地元の野生動物の駆除についての知識を得たり考えたりするきっかけになってくれると良いのではないかと思います。
 
 大昔のことは置いておいての話になりますが、秋田では以前はイノシシとニホンシカは生息していなかったので、 野生動物の駆除や捕殺の多くはツキノワグマでした。猟師さんたちは、山からの授かりものとしてほぼ全頭を解体していると思います。
 
 ですが、10年ほど前からイノシシとニホンシカの目撃例が秋田県内でも増えてきて、今では秋田県全域にイノシシとニホンシカが生息し頭数を増やしており、捕獲数も年々増えています。熊よりも、繁殖力は大きいと思いますし、山の環境や農作物へ被害を与える力も、熊よりも大きなものだと思います。
 
 イノシシとニホンシカの捕獲は熊の捕獲とは異なる技術が必要になるので、急速な人口減少と高齢化とハンター人口の減少の中で、今後の新たな事態に対応していくのは、かなり大変なことだと思います。お隣の岩手県では、年間3万頭近いニホンシカが駆除されていますし、イノシシの駆除数も増えて年間1500頭以上のイノシシが駆除されているようです。熊への対応だけでも困難さを増している中で、今後は秋田でもイノシシとニホンシカは確実に増えると予想されます。
 
 私の素人予想ではありますが、熊と同等かそれ以上にイノシシとニホンシカの問題に直面するまでの時間の猶予は、それほど無いだろうと思います。イノシシとニホンシカによる農業被害額は桁違いに増えると思いますし、人身被害も起こるのではないかと思います。さらなる野生動物の脅威が迫ってくる中で、他県の先例も研究して、どのような対応が可能なのかを考えて準備するしかありません。行政・自治体の担当者には、工夫して現実としてできる方法を探っていただきたいと思います。駆除に対する遠方からの苦情への戸惑いは大きいと思いますが、内なる問題への取り組みが最優先されるものと思います。
 
 山からの授かりものとして、熊に関してはほぼ全頭解体を行い、最低でも肉をいただくということを行ってきた秋田のマタギ文化がありますが、イノシシやニホンシカの駆除数が増えた場合は、解体せずにそのまま焼却処分せざるを得ない事態が増えるかもしれません。

 野生動物と人が対峙しなくてはならないのは、昔も今も変わらないことだと思います。ただ棄てるのではなく、命をいただくということを当然のこととして実践していくことが必要なのだろうと思いますが、それは簡単なことではありません。
 
 命をいただく中には、野生の動物の皮を使うということも含まれていると思いますし、できることがあれば私も皮の活用に関わることができればと思います。 
 
 
 
 
 固めた熊の革の中には重りが入っています。
  
 現実を見れば、言葉で言うほど、野生動物の皮の活用は簡単なことではありません。授かりものを活かし切るという強い意志のある人がいなければ、皮の活用など全くできません。家畜と異なり、野生動物の命をいただき活用するための仕組みは整っていないので、個人の熱意が頼りのところがあるのです。
 
 生きているときからその動物と関わり、汚れる仕事も厭わず、多くの手間と時間と費用をかけることに耐えられる人がいて、さらに周囲の関係者の理解と協力があって初めて皮の活用に道が開かれます。野生動物の問題は、すでに社会問題化しているものですので、本来は行政や自治体の主体的な取り組みも必要だと思いますが、まだそういった取り組みや準備は不十分な状態です。
 
 
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 全国で毎年数多くの野生動物が駆除されているのが実情です。イノシシとニホンシカと熊の捕獲数を少し調べただけですが、実に多くの頭数が捕獲されています。タヌキ・アナグマ・アライグマ・ハクビシン・キョンなどの、他の動物も合わせた野生動物の捕獲数は年間で百数十万頭以上といった、相当の数字になるのではないかと思います。(近年のデータは見つけることができませんでしたが、ニホンザルも毎年1万頭程度は駆除されているようです。)
 
 数字は仮のものになりますが、1/1,500,000 (150万分の1)頭の秋田の野生動物の駆除について考えることは、貴重な機会なのかもしれません。1頭の駆除から考え始めることで、今そして将来の野生動物と人との関係性や駆除について、いろいろなことを知り考えることができるのではないかと思います。野生動物の駆除は遠くの出来事ではなくて、身近な事実として全国で広く行われているものですので、誰もが当事者だと言えるのだと思います。1頭の駆除を考え、そして万の頭数の駆除についても考える。そうすれば苦情とは異なる考えや思いが出てくるかもしれません。
 
 熊の駆除について考えるときには、その地域に生息していると想定される熊の頭数についても考えていただきたいと思います。地域に数十頭・数百頭の生息が想定される地域と、数千頭の生息数が想定される地域では、自ずと対応の方法に違いが出ると思うのです。
 
 日本史という大きなときの流れで見れば、早い時期から日本の歴史の中心として発展した西日本では、木の伐採等で人による自然環境への負荷が早期に始まり、東北地方などと比べると山の環境変化や荒廃が歴史的に早く進んだ地域だと思います。現在の熊の生息数も少なくなり、自然環境の分断により個体群が別れた結果、絶滅が危惧されている個体群が複数あるようです。
 
 秋田をはじめ、東北のツキノワグマの生息数は多いわけですが、それは人と自然の共生が、過去から現在まで継続されている結果だと思います。いくつかの資料を見る限りの個人的な感想ですが、長い年月に渡る人の影響を受けて危機にあるのは、東北の熊よりも、西日本の生息数の少なくなっている熊なのだと思います。そしてもちろん、生息数の比較的少ない都道府県でも、熊の害獣駆除や殺処分は行われています。
 
 全国的には熊の生息数は増加傾向にあり、西日本でも個体数の増加により、熊の個体群の絶滅の恐れが解消されたと考えられる事例もあるようです。学習放獣を多く実施していた県でも、個体数の増加に合わせ、有害捕獲を基本的に殺処分とする対応に変えている事例などもあり、状況に合わせて全国の自治体が熊の駆除を行っています。
 
 秋田では、熊の禁猟をしていた時期があり、その後の現在では多くの熊が出没する状況になっています。 日本全国で毎年多数の野生動物が捕獲されていますが、ただむやみに野生動物を駆除している地域も自治体も無いのだと思います。
 
 秋田には熊の出没・目撃情報を表すマップがありますが、目撃例が多い地点の熊の生息数が必ずしも多いとは言えません。人が多く通る地点で、熊の目撃情報が多くなる傾向があります。それはつまり、人が多いところにまで、熊が出没するようになっているということであり、生息域が確実に広がっているということを表しています。
 
 
(あきた森づくり活動サポートセンターのサイト内)
 
 山間部などのもともと熊の生息数や出没数が多い地域では、熊が居たとしても、それが当たり前という認識もあると思います。人が熊を目撃したとしても、いちいち目撃情報を通報したりマップに書き込んだりしていないことも考えられますし、目撃する人の存在が希薄であるために、目撃例が自ずと少ないということも考えられます。そういったこともあり、マップは地域の熊の生息数を表すものではありません。マップにはイノシシとニホンシカの目撃地点も表示されますが、目撃情報が増加しており、熊を筆頭に野生動物が人の生活圏に近づいてきている現在の状況が読み取れるものです。
 
 目撃情報・出没情報の少ない山の中に、多数の熊が生息していると思いますが、生息数の増えているイノシシとニホンシカとの餌の取り合い・縄張り争い・生存競争という状態が、新たに生まれつつあるかもしれません。山の環境も変わってきているのではないかと、そんな想像もしています。
 
 野生動物を、愛玩動物のように考えていられるほど、人間は強い存在ではないのだと思います。いつでも野生動物の保護者として振る舞えるほどに人が強くないとしたら、やはり負けないように自分の生活圏を守り、そして命をいただくことを肯定的にとらえていくべきなのではないかと思います。

 共生や野生動物の保護、自然環境の保全を否定的に考えるわけではありません。共生の中には、人が生活圏を守り戦うことも含まれていると思います。自衛の守備的なものが中心になると思いますが、どのような戦術で戦っていくのか、現実的なやり方を見つけていくしかないのだと思いますし、早めに手を打っていかないと、大変なことになるのではないかと思うものです。

2024/08/05

区域区分(線引き)の廃止という選択 2025.01.19加筆

 
 上の図は、市街化調整区域の環境の維持のための対策が、社会の状況により異なるということを表したものです。右肩上がりの成長期の社会で大規模な開発が活発に行われていた時代には、農村地域の無秩序な開発を防ぎ環境を維持するために厳しい制限が必要だったのだと思いますが、現在の下り坂の衰退期の社会では、逆にある程度の開発緩和を認めて地域の土地や空き家の利活用を推進しないと、地域の維持を図ることができないことを表した図です。市街化調整区域の環境の維持は、開発の厳しい制限という手法では難しい状態になっていると思います。
 
 さまざまな課題のある地域づくりのために、秋田市で今後できることは限られていると思いますが、市街化調整区域でできそうなことを書いてみたいと思います。簡潔に言うと、タイトルにもある通り、区域区分(線引き)の廃止、市街化調整区域の枠組みをやめる選択の検討も必要ではないかという内容です。
 
 文中に「開発」という言葉が出てきますが、家や小さな店舗の建設などの小規模な建築等、一般市民の身近な行為も含む意味の言葉です。現在の市街化調整区域では、そうした個人の私権とも言える小さな開発も厳しく制限されています。
 
 農家であるという属人性に基づいてさまざまな規制が定められている市街化調整区域には各種の厳しい制限がありますが、それは現在の社会には不適切な時代遅れのものになっているのが現実だと思います。農村地域でも市街地でも社会全体が揺らいでおり、著しく人口が減り高齢化・過疎化する市街化調整区域の制限は、すでに現在の社会に合っていないと思うのです。また、農業も法人化が進められており、日々新たな技術の導入も図られている時代ですから、個人の農家が代々そこに住んで家族単位で営農することを想定して決められた制限は、農業の在り方の変化を考えても見直しが必要なのではないでしょうか。
 
 区域区分(線引き)による市街化調整区域の役目は終わりに近づき、現在では地域づくりの足かせになっていると思います。実際に区域区分を廃止した、あるいは廃止を検討している県や市などの自治体は全国にいくつもあります。「区域区分 廃止」という言葉で検索すると、いくつものページが表示されます。

 その中で私にとってわかりやかったのは、すでに8年前の平成28年(2016年)に区域区分を廃止した京都府綾部市の事例です。
 

 綾部市が公開している区域区分の廃止についてのpdfの資料はたいへんわかりやすく、人口規模等は異なりますが、具体的な事例として秋田市に当てはめて参考にしやすいものです。(面積や人口は潟上市と似通っています。地形的には、山地も多い秋田市と通じるものがあると思います。)
 
 綾部市の区域区分の廃止は、市街化調整区域だけではなく、市街化区域の課題解決も意図したものです。市街化区域と市街化調整区域の指定がなくなり、市街化区域では用途地域を継続しながら用途制限や容積率制限を一部緩和し、市街化調整区域では新たに「特定用途制限地域」を設定し、さらに「特定用途制限地域」の中に「田園居住地区」と「特定沿道地区」を設定して、都市計画や開発をコントロールする手法です。区域区分に頼らずとも、まちづくりを考える方法はいくつもあります。 

 綾部市の資料の中で注目したい単語は「特定用途制限地域」です。「特定用途制限地域」は用途地域の定められていない地域に対して、地域の実情や特性に合わせて自治体が用途の制限などを定めることができます。秋田市も、やろうと思えば独自に用途制限の内容を定めて地域を指定することができるということです。
 
 また、綾部市が定めた 「田園居住地区」と似た言葉に、用途地域の一つとして定められている「田園住居地域」があります。用途地域の「田園住居地域」の用途制限は、第一種低層住居専用地域に準じる内容が多く制限が厳しく、それに加えて農業関連の事業がある程度認められるような内容ですが、綾部市の 「特定用途制限地域」の下に定められている「田園居住地区」では、第一種住居地域と同等の開発が認められており、農業関連という縛りも無く、狭い地域内だけを顧客範囲としなければならない市街化調整区域の1号店舗のような制限もなく、法人でも個人でも郊外の広い土地などのメリットを十分に活かして活用できる内容だと思います。近年の地域活性化のキーワードである関係人口や交流人口を増やすことにつながる活動も、十分な自由度で行うことができます。
 
 現在の市街化調整区域では、その地域の住民を対象とした日用品販売の店舗しか許可対象になりませんが、規制が緩和されて開発が認められれば、さまざまな業種の店舗・事務所・宿泊施設や、塾などの教育関連の事業所や、ICT関連等の時代の変化の中で生まれる新しい業種の事業所などの開設の可能性が広がります。私自身の関係するクラフトの世界で考えると、現在の市街化調整区域では不可能なクラフト関係の小規模な工房等の集積なども可能になります。もちろん、農家でなくても家の建築もできます。ある程度の規模の開発が認められると同時に、小規模な開発での自由度も格段に向上します。「特定沿道地区」では認められる開発がさらに緩和されます。
 
上の画像は、綾部市の資料をパソコンに表示したスクリーンショットです。
 
 綾部市の「特定用途制限地域」の規定は、田園地域の環境を守りつつも地域の存続のためにはある程度の開発を認めることを、自治体や地域住民が自らの責任で考え決める姿勢が鮮明に感じられます。開発緩和をするだけでなく、地域の住民がその地域のまちづくり計画を主体的に策定できる制度も定められていますし、無秩序な開発を防ぐために事前に事業者が地域住民と市と協議する要件なども定められています。田園地域や農山村などの既存の枠組みを守りながら、大きな枠組みとしては適度な開発を認めていくわかりやすく合理的な内容が、難しい言葉を使わずに簡潔にまとめられていて、たいへん参考になります。
 
 綾部市の「田園居住地区」は、市街化調整区域と比べるとできることが格段に多くなりますが、実は秋田市が都市計画法第34条12号で河辺・雄和地区の幹線道路沿い100メートルの範囲だけに認めている緩和内容は、住宅等の建築が認められないことを除けば綾部市の「田園居住地区」と同程度の開発が可能です。平成の合併後に河辺・雄和地区での新たな市街化調整区域の指定によって急激な開発制限が起こることを緩和する措置によるものですが、秋田市は同じ市街化調整区域でも緩和内容の地域差が極端に大きくなっており、市民に対して公平性に問題がある制度で業務を行っている状態にあると思います。(同じ河辺・雄和地区であっても、12号指定から外れていれば、他の秋田市の市街化調整区域と同じ条件になります。)
 
 区域区分の廃止の検討は、合併による地域間の格差や不均衡を解消することも目的に一つになっている場合がありますが、秋田市は合併後の地域間の格差を放置しているような状態だと思います。必要以上に厳しい開発制限はある意味では個人の資産の活用を妨げる私権の阻害であるという考え方もありますので、秋田市内の市街化調整区域の制限が地域によって差がある不公平な状態は、同じ市民なのに私権の制限に不公平が生じているということになると思います。
 
 また、市街化調整区域の家や土地の利活用を考える場合、区域区分の制定される線引き前の建築なのか線引き後の建築なのかも重要になりますが、河辺・雄和地域での線引きは平成26年(2014年)であり、それ以外の秋田市では昭和47年(1972年)になりますので、同じ秋田市なのに42年もの差があります。合併により生じたことだからと問題視されていないのだろうと思いますが、まちづくりは昔の計画で考えるのではなく、いま考えなくてはならないことですから、このような格差も含めて見直したほうが良いのではないかと思います。
 
 市街化調整区域の開発の緩和措置の一つとして都市計画法第34条11号による地域指定がありますが、住宅が50戸程度連たんしていることが条件であり、戸数が少なければ11号の区域指定はされず、小規模な既存集落の成り立ちや歴史的背景などが十分に考慮されるのか疑問に思います。
 
 秋田市の山手台や南が丘などの住宅地は、一般の人も普通に家を建てて使うことができますが、実はどちらも市街化調整区域です。開発業者が森を切り開き、比較的近年に大規模開発した市街化調整区域の宅地は、属人性の制限を受けず使われています。その反面、百年・千年単位の昔から人が住み続けている土地でも、それが市街化調整区域にあり住宅戸数が少ない小規模な既存集落の場合は、一般の人がその土地を使いたいと思っても、都市計画法の定める属人性に基づいた厳しい制限を受けることになります。人が住みやすい自然環境や地理的要件が整った場所だからこそ、長い年月に渡り人が住み続けてきたわけですが、そういった場所でも中央省庁が机上で決めた数の決まりのために、厳しい制限を受けることになるのです。歴史的な人の営みを無視した、中央省庁が決めた基準だけで緩和地域を指定するだけでは、地域の歴史や現状に合わせたまちづくりの施策などできるわけがありません。11号指定ではカバーできない地域の歴史や人の営みがあると思います。また河辺雄和地域の12号指定のように、現在の幹線道路を基準にした一律の緩和指定も、地域の歴史や地理的な特徴を十分に反映する緩和措置にはならないと思います。
 
 秋田市の11号指定の緩和内容は、第一種低層住居専用区域とほぼ同じ用途制限となります。そして、市街地に家を所有している人は11号指定区域に家を持ち使うことができないという決まりもあります。わざわざ開発緩和の中身を乏しくして、柔軟性に欠ける決まりだと思います。地域の振興策として、二拠点生活・二拠点居住・交流人口・関係人口の拡大という言葉を秋田市もさまざまな場面で使っていますが、制度としては市街化調整区域に外から人が来ることを制限することを基本にしています。計画の言葉と制度の整合性が十分では無いのが現実だと思います。 外の人ばかりでなく、市民が市内で実践する二拠点生活があっても良いはずです。それを制限して秋田市にどのような利点があるのか、私にはわかりません。
 
 上記のような秋田市内の不公平・不均衡・不十分な緩和内容を考えても 、人口減少・高齢化・過疎化などの社会問題への対応を考えても、区域区分の廃止を含めて秋田市は考える必要があると思います。全国各地の自治体が行っているのですから、秋田市でも可能だと思います。まちづくりの計画書をコンサル会社に任せないで、自ら考えて柔軟な地域づくりができる制度の実現を目指してほしいです。
 
 区域区分による市街化調整区域の指定は、もともとは国の方針に則って県が主体となり行ったものだと思いますが、秋田市は中核市として各種の権限の移譲を受けているので、 区域区分の今後についても秋田市が主体的に考えるべきものだと思います。人口減少により困難になってきている地域の維持や振興のために、関係人口や交流人口を増やそうという文言が市の資料には記述されていますが、市街化調整区域の制限はそもそも外から人が入ってくることを強く制限しているのですから、まずはその根本的な矛盾を解決することが、自治体に求められる最初の一歩なのではないかと思います。
 
 人に来てほしいのならば、来やすい環境を制度面からも整えるのは当然のことだと思います。根本的な見直しをしなければ、市のまちづくりや農村振興の計画と現実との矛盾が大きくなるばかりだと思いますし、今後の地域づくりを考えるときの選択肢がとても狭いものになってしまうと思います。
 
 秋田が、日本全国で最も深刻な人口減少・高齢化・過疎化に直面していることを考えると、県庁所在地であり県内自治体の中で最も人口減少数が多くなる秋田市が、率先して都市計画や区域区分のあり方を見直すべきだと思います。(秋田市は2050年までに7万人以上人口が減ると予測されています。)現在の厳しすぎる市街化調整区域の制限を見直して、適度に開発を緩和することが秋田市でも必要だと思います。
 
  もしも区域区分を廃止せずに、現状のままで対策を考えるとしたら、市内の市街化調整区域全域に12号の開発緩和指定を広げることや、線引きの前後に関わらず、住宅や宅地を農家でなくても当たり前に利活用できる制度を考えるなどの具体的な措置の検討が、早急に必要だと思います。11号指定の緩和内容の拡大も検討が必要だと思います。近年の不動産の相続や管理を厳格化する施策の実施だけではなく、同時に不動産を使いやすくするための施策の実施も必要だと思います。
 
 一部の市街化調整区域の制限を外して大規模商業開発するような計画を、モデルシティと称して秋田市は実施しようとしています。それが秋田市の各地域にとっても意義のあるモデルになるとは思えませんが、区域区分について根本的な見直しを行い、地域の特性に合わせた開発を柔軟に考えられる地域づくりの新たな制度を提示することは、秋田市全域の未来のために大いに意義のあるものになると思います。
 
 私が市街化調整区域について考え始めたのは、元はと言えば、自分が郊外の市街化調整区域への移転を考えたときに、あまりにも不自由で現実に全く合っていない制度と業務があることを知ったのがきっかけです。自分なりに調べたり考えたりした中で、秋田市は全国的に見ても消極的で古い体制にあるのではないかと思いました。また、すでに内容が古くなっている都市計画法の市街化調整区域の制限の中で、良いとか悪いとかを市民と自治体が論じても仕方ない社会情勢になっているとも思います。本来ならば、そんなことをやってる場合じゃないというのが実感としてあり、もうとっくに次の手が考えられているべき状況にあると思います。
 
 この記事で紹介した綾部市が平成28年に線引きを廃止したのに対して、秋田市はその2年前の平成26年に河辺・雄和地区に新たに線引きを行ったわけですから、自治体によって考え方や業務に大きな違いがあることがよくわかります。区域区分に縛られずに今後の地域づくりを考えて、簡潔にわかりやすい形に整理して市民に提示することが、秋田市にも必要だと思います。都市計画には秋田県も深く関わっていますので、秋田市が今後のまちづくりについて主体的に方向性を定めたうえで、県との調整をしっかり行ってほしいと思います。県庁所在地のまちづくりの根本に関することですので、県も積極的に関わってほしいと思います。
 
 本来ならば、中身が古くなっている都市計画法の根本的な見直しを国が行うのが筋だと思いますが、それが早期にできるとは思えないので、急速な社会の変化に対応するためには自治体が主体的に変えていくしかないと思います。

 区域区分の廃止は、特に極端な考え方ということでもなく、当然考えられる選択肢の一つとして他の自治体でも普通に論議され、また実施されている事例のあることです。さまざまな立場の人と秋田市の市街化調整区域の問題点などの話をしたときに、市街化調整区域だから仕方ないという論調がとても多くありましたが、現在の社会情勢の中で市街化調整区域の制限が当たり前だとは思えません。秋田市でもタブー無く論議して、古い線に縛られずに、新しい線を引いてまちづくりの構想を刷新すれば良いと思います。
 
 市街化調整区域について、秋田市の制度と業務が変わることを願ってしつこいほどに書いてきましたが、行き着くところの区域区分の廃止の選択について書いたところで一区切りにしたいと思います。
 
 専門知識のない素人ですので、複数の記事の中には勘違いしている記述などもあったと思いますが、一連の記事では素人の私が思ったことをそのまま書いてみた次第です。読みやすいものではなかったと思いますが、悪しからずお許しください。

2024/02/27

秋田市の市街化調整区域の店舗の許認可業務の改善について 2025.03.11編集

 千秋公園から望む太平山 今冬は雪が少ない
手前の山の向こう側にも街が広がっているが
秋田市の内陸側は市街化していない場所が多くある
 
  2023年に店舗の移転を計画していましたが、2023年7月に大規模な洪水が発生したときに、移転先となる物件も被害にあってしまいました。川の近くの物件でしたが、地域にお住まいの方々もかつて体験したことがないほどに浸水してしまいました。 近年の気候変動を考え、また自治体の今後の水害対策がどのていど有効になるのか不明な中で、この移転計画は白紙になりました。
 
 白紙にはなりましたが、2023年に店舗の移転計画を進める中で、秋田市の市街化調整区域で店舗の許可が得られないことを知り、2023年の前半の半年間は秋田市に制度と業務の改善を求めることに大きな時間を費やしました。その間に知った制度と業務の問題点は、以前にも記事に書いてきましたが、2023年の半年間の働きかけの結果として、制約は多いものの条件を満たせば秋田市の市街化調整区域でも店舗が認められる業務と制度に改善されましたので、時間が経ってしまいましたが一つの締めくくりとして 、そのことについて書いておきたいと思います。なお、制度の詳細などについては、過去記事をご確認ください。
 
 ざっくりと、最も重要なことを書いておくと下記のとおりです。

○秋田市でも、都市計画法に基づいて、日用品の販売・加工・修理の店舗などが認められるように、2023年6月に業務の見直しが行われました。制度としては半世紀以上前からあったものですが、ようやく秋田市役所が制度に則って業務を行うようになったものです。
 
○最低限のことがようやく認められるようになったもので、現在の社会情勢や経済活動、新たな業種や業態に対応できる状態にはなっていません。
 
○日用品の販売以外の要件で、事業活動が柔軟に認められるような業務の見直しには至っていません。今後さらなる制度や業務の見直しが望まれます。
 
○その後の私の移転計画は、まったく進んでおりません。移転は必須ですが、どうなることか。


大森山から望む秋田市の市街地
これは夏の写真 今冬は冬でもこんな写真になるかも

 
 店舗の移転を計画する中で、秋田市の市街化調整区域では店舗などの開設許可を得ることができず、空き家や地域の利用価値が低いことを知りました。2022年の12月頃から国土交通省・県・市・国会議員・県会議員・市会議員等に問い合わせを始めました。市街化調整区域の問題についての認識や問題把握の程度は、個人により大きく異なっていて、それぞれ反応は様々に異なるものでした。きちんと現状を把握していて問題意識を持っている人もいれば、全く問題を把握していないのではないかと思われる人や、問題点を改善する意志が希薄と思われる人もいました。
 
 大元の制度の担当省庁である国土交通省に電話をして、担当部署の職員とも合計で2時間ほど都市計画法・市街化調整区域の制度について話をしました。また、同じ法令のもとで全国の自治体ごとにその運用が大きく異なっているため、先進的な運用の自治体や厳格な運用の自治体の担当課にも電話をして、担当者から話を聞きました。
 
 その中でわかったことは、市街化調整区域の制限の大元となる都市計画法が制定から半世紀以上経過して、すでに現在の社会にふさわしい内容ではなくなっているために、自治体がそれぞれの解釈で制度の運用をしているということでした。また、古くなった都市計画法から脱却して、市街化調整区域の枠組みそのものを廃止した自治体もありました。都市計画法は、農家は代々農家を継いで、田畑の近くに長男も次男も三男も住むだろうという前提で土地利用が考えられていて、現在の社会情勢には全く適応していない内容になっているので、自治体が工夫して業務を行わないと、郊外地域の人口減少や空き家増加などの過疎化・空洞化に対して、有効な対策を取ることが難しいのが現状でした。国土交通省にしても、市街化調整区域に厳しい制限を設けながら、そこにある空き家や土地などの地域の資産を有効に活用するべきだという、矛盾した内容の政策を行っているのが現状でした。土地利用に関しての大元の法令を変えずに、小手先でなんとか対応しようという政策が取られているような印象でした。
 
 秋田市の場合は、古くなった都市計画法に基づいて厳格に業務を行っている面があると言いますか、あるいは逆に正しく守っていないと言いますか、独特の解釈で運用しているようなところがありました。都市計画法で利活用が禁じられているから空き家の店舗等の事業所としての有効利用はダメというのが基本方針としてあり、都市計画法の中の緩和措置として認められている店舗の許可についての制度も活用せずに、店舗はダメの一点張りという感じの制度運用と業務を行っていました。そのため、都市計画法で認められている1号店舗についても、ほぼ許可したことが無いという状態でした。法令を厳格に守る姿勢を持ちながら、その一方で法令の中で認められている緩和措置を認めないという、少々いびつで変わった業務だったのですが、長年の前例踏襲でそれが当たり前のことのように行われているように見えました。当初、市役所職員と話をするときに、いったいどの時代の人と話をしているのだろうと思ってしまうくらいに、説明や運用に現代的な視点が感じられず、現実と整合性のない古臭い内容に感じられるものでした。
 
 それでも、問題を認識してくれる方々が各所にいて、様々な立場の人たちからの理解と協力もあって、秋田市でも1号店舗については前向きに検討し許可するという業務の改善が2023年の6月ころに決まりました。ご尽力いただいた皆様に感謝です。都市計画法が制定されてから半世紀以上経っての業務の見直しなので、随分と遅い対応ではありますが、 秋田市でもようやく郊外の市街化調整区域の空き家などの利活用に、今までよりは少し可能性が広がりました。
 
 私にとっても朗報だったのですが、その翌月の7月に大規模な洪水が発生してしまい、私が移転しようと思っていた場所もかなりの水深で水害を被り、移転計画は白紙にせざるを得ませんでした。
 
 ほぼ許可しないと決めていた業務から、許可もできる前提に変わった秋田市の1号店舗の許認可業務ですが、1号店舗は日用品の販売・加工・修理等の店舗に限って許可されるもので、現在の新しい業種や事業や職種に対応できるものではありません。市街化調整区域の空き家を利用して、例えばIT関連の事業を行うなどは、日用品の販売ではないので許可の対象外になります。それをそのまま当てはめて私の事業で考えると、革製品の販売加工及び革手芸用品販売の店舗として1号店舗の許可が得られますが、細分化して考えると私の教室業務は1号店舗の対象外の業務ということになります。もちろん、教室は私の業務の一部であり販売促進の一環の業務ですから、あくまでも本業は皮革製品の販売加工等であり1号店舗の要件は満たしています。
 
 いくつか例を考えてみると、洋裁学校は1号店舗の対象外ですが、手芸教室を販促事業として行う手芸店は1号店舗の対象になると考えられると思います。子供の学習塾はどうでしょうか。日用品の販売ではないので、1号店舗の対象外だと考えられます。地域の子供が利用できるように学習塾を開きたいと思っても、秋田市の市街化調整区域では基本的には許可されないと思います。現在の少子高齢化や郊外の過疎化問題の中で、その地域のためになり子どもたちのために必要なものであっても、その地域に住む人を対象とした日用品の販売・加工・修理以外のものは認められないのが、市街化調整区域で認められる1号店舗の規定なのです。
 
 秋田市では、引き続き厳しい制限がありますが、自治体によってはかなり制限を緩和して運用しています。飲食店・理髪業・コンビニなども生活に必要な事業として1号店舗の対象にしている場合も多くあります。緩和的運用の例の一つですが、前橋市の1号店舗の運用基準では、「第一種中高層住居専用地域に建築することができる店舗、飲食店等」が許可対象とされており、「学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設」も許可対象です。他にも物販以外の店舗も許可対象になっています。同じ法律に基づいて運用されているのに、その内容は自治体によって実に大きな違いがあります。ちなみに、秋田市の場合は許可対象とする事業の詳細な規定は公開されておらず、制度や運用の内容は明確化されていません。
 
 2023年6月に決まった秋田市の1号店舗許認可の業務改善は、本来法令で認められていることを認めることにしたというもので、ようやく法令ができた半世紀以上前のレベルになっただけです。現在の社会の変化に対応したものには、まだまだほど遠い状態だと思います。半世紀以上の市役所内の業務の前例踏襲を廃して、1号店舗の許可に舵を切ったことは、市役所としてはおそらく大きな転換だと思いますのでもちろん評価できますが、今まで秋田市の制度と業務の壁に阻まれてきた人たちが多くいた事を考えると、やはり対応が遅すぎたのではないかとも思います。ますます人口減少や空き家の増加の問題は深刻になりますので、現在の社会状況に適応できるように、さらに踏み込んだ制度や業務の改善に取り組んでほしいと思います。
 
(河辺・雄和地区の市街化調整区域には、広く12号指定という開発緩和措置が定められているため、秋田市の他の地域と状況が異なります。合併からの経緯ですが、秋田市は地域により緩和内容が公平ではありません。)
 
 秋田県内で市街化調整区域の定められている自治体は、秋田市と潟上市だけです。もともとは県が定めて市が管理している関係にあるのですが、市街化調整区域のあり方については、早急に関係者・関係機関で話し合い、現在の社会情勢の中での制限と利活用のあり方を見つめ直す必要があると思います。人口減少があまりにも早く進んでいますので、待ったなしで必要な見直しだと思うのですが、その動きは鈍いのではないかと昨年の活動中には感じました。
 
 せめて、空き家の利活用については早急にもっと積極的に対応していかないと、郊外地域の過疎化や荒廃の進行の放置につながってしまいます。 近年問題が顕在化している熊の問題でも、人と野生の境界域をどう維持していくのかというのが課題となりますので、空き家の利活用を含めて人の生活圏の維持のためにできることは、何でもやってみるべきなのではないかと思います。熊だけでなく、イノシシやニホンシカも山では増えてきています。すでに秋田市の郊外でも、イノシシやニホンシカが居付き生息している状況になっていますが、繁殖力などを考えると今後もどんどんその生息数は増えていくと思います。農作物への被害や人への被害は、熊以上になる可能性がありますので、熊対策と同時に考えていく必要があります。
 
(私自身も、マタギの若者の野生動物の皮革の利活用事業に協力する形で野生鳥獣対策の一端に参加し、熊・イノシシ・ニホンシカの皮革の利活用を視野に入れています。)
 
 全国的に見ると、ツキノワグマの捕獲数は1年間で数千頭規模ですが、イノシシの捕獲数は50万頭以上、ニホンシカの捕獲数は70万頭以上です。熊以上の数の脅威が、すぐそこまで来ているのではないかと危惧しております。
 
 
 ツキノワグマの爪 磨いたり中の構造を確認したり
秋田銀線細工や革と組み合わせる予定
 
 
 
 ところで秋田市では、経産省の地域未来投資促進法という制度を利用して、外旭川の市街化調整区域と農地を含めた大規模な開発を行おうとしています。この法令では、工場・研究所・物流施設などは対象として認められていますが、大規模に人を集め周囲の宅地化を促進してしまうような集客性の高い商業施設は、基本的には対象外とされています。でも、秋田市はイオンを中心にした商業地域を造るのが目的のように見えます。東北からイトーヨーカドーが撤退と言った報道もある中で、スーパー依存の開発をこれから行う必要がどれほどあるのか疑問に思います。もはや古い手法となった昔の開発計画のように感じられるのですが、イオンの事業と競合する地元の企業をもっと大事にしたまちづくりはできないのだろうかと考えてしまいます。
 
 都市計画の基本的な欠陥とも言えそうな秋田の市街化調整区域の問題を放置しながら、一方では市街化調整区域や農地に商業地域を無理をしてでも造りたいという政策がどうして行われているのか、私には理解できません。秋田市には、立派なまちづくりの指針となる計画書がいくつもあり、その中では良いことがたくさん書かれていますが、それが市政に反映されているとは思えない点もあります。地元紙の連載で知ったことですが、こういった計画書は市役所内で必ずしもまとめられたものではなくて、外部の業者に外注してまとめさせたものもあるようです。中央省庁の発信している言葉をそのまま使ってまとめたような文章が多いのですが、体裁だけの計画書で、本当に地域の問題を見つめて書かれたものではないのかもしれません。市街化調整区域についての問題意識が各所で低く感じられたのも、自分たちで考えていなかったからなのではないかと、地元紙の記事の内容には私なりに納得のいくものがありました。
 
 
 
 秋田市の海沿いは街が発達
外旭川地区は中央から右寄りの遠くにある
海岸線は風車だらけ 最も遠くに見えるのは男鹿半島
 
 
 外旭川の開発で利用しようとしている地域未来投資促進法において、すでに秋田市で認められているのは、河辺のへそ公園周辺での事業です。地域未来投資促進法は地域資源を活用した事業を行う制度ですが、計画資料や報道から判断するとこの地域で中核となるのはウイスキーなどの酒類の製造施設なのではないかと思います。計画地域は水のきれいな鵜養の入口あたりの地域です。鵜養では秋田市の酒造会社の酒米づくりも盛んですし、豊かな水資源がある地域の特性に合った事業計画なのかもしれません。
 
 経産省の地域未来投資促進法の同意計画の一覧で東北の事例を見ると、ピンポイントの地域開発で特例を受けようとする内容であることが秋田市の特徴としてあるように感じます。他の事例では、もっと広域で地域の特徴を活かし課題に向き合う雰囲気を感じるのですが、外旭川開発計画と河辺の計画を見ると、秋田市はここを開発したいという狭いエリアに集中した個別開発への制度の利用の意図が強いように見えます。
 
 外旭川開発を考えるより、市の建設部には市街化調整区域や秋田市郊外の問題解決のために制度や業務の見直しをしてほしいと思うのですが、市街化調整区域や農地の利用法を変えてまで計画されている外旭川開発の担当部署は、実は建設部では無いようなのです。秋田市が大きな計画や市長の意図する計画を進めるときの担当部署は、企画財政部であることが多いようなのですが、外旭川計画を実現するための部署も企画財政部にあります。制度の趣旨や秋田市のまちづくり計画と矛盾しない市政であってほしいのですが、私が2023年に市や県の様々な部署と話をしてみた感じとしては、行政も一枚岩ではなくて、外旭川開発を市や県の各部署が一丸となって強力に進めようとしているような雰囲気はありませんでした。この記事を書いている2024年2月現在、知事はこの計画に同意していませんが、この先どうなりますことか。
 
 突出した目立つ開発計画よりも、市内各地域の問題を見つめ直して、基本となる制度や業務の見直しをしてほしいと思います。私が調べてみた市街化調整区域の取り扱いだけでも矛盾だらけで、現在の社会の変化に全く対応できていませんでした。外旭川開発に掛ける時間と労力と個々の職員の能力を、すでに足元にある秋田市の課題解決のために使ってくれたら、きっともっと秋田市政は良くなるし、人口減少にも対応していくことのできる可能性があると思います。
 
 今後の秋田市の人口減少の割合は、%で言えば県内の他の自治体よりはまだ良い方ですが、 もともとの人口が多いので減少する人数で見ると圧倒的に秋田市が多いという現実があります。秋田市は、一部の市街地以外の郊外はかなりの田舎であり、開発されていない田舎の部分が多い自治体です。人口が減るから、そういった地域は寂れて当然とすることはできません。祖先が切り開いてきた人の生活圏・活動域を簡単に手放してはなりませんので、市街化調整区域を含む郊外の在り方を、県と市には考えていただきたいと思います。
 
 
以下 2023年 3/13および3/24に追記
 
 地元紙の報道で見たところ、 外旭川の開発事業計画において、秋田市役所は地域未来投資促進法を農地の制限解除に利用し、市街化調整区域の制限解除は都市計画法で行うと表明しているそうです。私が空き家を店舗に利用するにあたっては、古い農作業小屋を使う私のささやかな工房店舗が新たな市街化や宅地の増加につながる可能性があるからダメだと、規制一辺倒の非常に厳しい説明をした秋田市役所が、いったいどうやって都市計画法で制限を解除し大規模商業開発を可とするのか想像ができません。
 
 市街化調整区域の中で開発緩和を認める11号指定された地域でさえ、秋田市役所では第一種低層住居専用地域と同等の開発と土地利用しか認めないと、私は何度も言われました。第一種低層住居専用地域で許容されるのは店舗兼住宅・事務所兼住宅で、面積は50㎡までです。独立した店舗の設置は認められません。そして顧客の過半が店舗周辺の住民でなければなりません。そういった厳しい規制を市民には強いているのに、自らは市街化調整区域で大規模商業開発を計画し推し進めているのですから、市民には厳しく、大手企業と自分たちには甘くという姿勢があまりにも露骨です。
 
 ちなみに、お隣の潟上市では同じ11号指定地域で「地域ごとの課題に柔軟に対応」できるように、「一般住宅・店舗等・事務所等・ホテル・旅館・小規模工場」などが認められる事になっています。1号店舗と異なり地域限定の日用品の販売店に限られるものではなく、情報やシステムなどの現代的な業種や学習塾等も含めて、幅広い業種が対象になるものと思います。
 
 それと比べて、秋田市の市街化調整区域の事業所の許可はたいへん厳しいものです。すでにそこに存在する建物を使う場合でも、日用品をその地域の人たちに販売する目的の店舗以外は認められないというのが都市計画法の原則としてあるため、秋田市役所の業務はそれに厳格でした。大規模商業施設などはもってのほかで、その地域に居住する人が利用する日用品販売に限られた小規模なものでなければならないというのが秋田市の立場です。それなのに、秋田市役所自らが計画する大規模商業開発は、都市計画法で許可するという見解を秋田市役所が表明していることに大きな矛盾を感じます。
 
 商業施設ではなく、ただ家を考えた場合でも、市街化調整区域に昔から存在している集落で規制緩和の11号指定から漏れていれば、今後その集落を維持していくために、人が家を所有し住むこと自体が難しくなるのが現実です。古い法令のままでは、農家以外は家を建てることも住むこともできず、多くの人にとって空き家も土地も利活用しにくいものになるのです。(家が建っている状態で、それが線引き前住宅であれば、農家以外の人にも利活用と再建築の可能性があります。河辺・雄和とそれ以外の秋田市では線引きの時期が異なり、合併前からの秋田市はおそらく不利な状況にあります。一度家を解体して、その後に農家以外の第三者が土地を取得して家を建てることは、おそらく秋田市の制度ではできないと思います。それが可能になる条例を定めている他県の自治体はあります。)
 
 秋田市役所には、自らの大規模な開発事業の都合で市街化調整区域について考えるのではなくて、もっと切実な市民の足元の問題として、都市計画法の根本から市街化調整区域の在り方や土地の利用規制やまちづくりについて考えていただきたいと思います。
 
 市街化調整区域の空き家増加や人口減少問題は、もうすでにかなり進行しています。また、市街地でも空き家の増加は深刻で廃屋化している家屋も至るところにあります。秋田市中心部の住宅地でも、廃屋は散見されます。住宅の密集した市街地では、接道状況から再建築不可の物件も多数あり、法律の制約で今後利活用の難しい空き家や空き土地はどんどん増えていきます。市も県も、こういった足元の問題について積極的に対応していく必要があります。これからますます今までの都市計画・まちづくりの欠陥が吹き出して来るので、まずはすでにある街や集落の見直しが必要なのだと思います。
 
 いまさらの商業施設を核にした大規模開発は、時代遅れの計画のように感じられます。外旭川をモデルシティとして、そこで得られた成果や知見を他の地域にも波及させると秋田市役所では説明しているようなのですが、都市計画法を都合よく使って制限を解除して行う大規模開発事業など、他の地域のモデルになるわけがありません。
 
 秋田市御所野はイオンを中心に開発されたような印象の住宅地ですが、地域間を結ぶ幹線道路からはずれた丘の上の立地でした。外旭川は地域間を結ぶ幹線道路沿いに開発計画地域がありますので、渋滞の懸念などを考えても、御所野とは異なる対策も必要になり、周辺を含めた開発の規模は拡大するのではないかと想像しています。御所野は秋田市の人口が右肩上がりの頃に開発されましたが、今は地域の人口減少や高齢化がすでに現れています。右肩下がりの情勢が急激に進んでいますので、イオンを中心とした大型開発の実効性や合理性がどの程度あるのか、将来の地域の在り方を含めてじっくりと考えるべきだと思います。2050年までの人口推計では、秋田市の人口は今よりも7万人以上減少します。2024年現在の潟上市と男鹿市と五城目町と井川町と八郎潟町と大潟村の人口を合わせたくらいの居住者が、秋田市からいなくなるのですから大変な人口減少です。商業地は当然影響を受けます。
 
 外旭川の開発については、本来は秋田市と秋田県が共同で計画を立案するのが在るべき姿だと思いますが、実際には秋田市がイオンと計画を立案し、それを秋田県が追認するかのような形で開発計画が進められているように見えます。地元紙の報道などを見たり、制度の趣旨を確認する限り、計画の根本から何かが違うのではなかろうかと、そんなことを感じます。
 
 より良い卸売市場とより良いサッカースタジアムを造る。それが主眼であるべきだと思います。実際にはイオンが主役かのような開発計画を強引にでも進めようとしている秋田市政は大丈夫なのでしょうか。人口減少や高齢化で各地域の衰退が間違いなく進行するのが見えているのですから、新たな大型開発ではなく、企業に対して既存の店舗の維持や充実を自治体は求めるべき局面のように思います。
 
 サッカースタジアムについては、サッカーの秋冬へのシーズン移行も想定すれば、北国秋田で屋根のないスタジアムを今から新設する計画は、なんとも貧弱なもののように感じられます。どうせならば、屋根付きで冬季間・降雪期の利用も問題なくできるものにしてほしいです。工事を行うことが目的になってしまうと、できてからがしょぼい公共施設になってしまいます。良いものを造ることをブレずに考えてほしいです。
 
以上 2023年 3/13および3/24に追記
 
 
鵜養地区にある清流 とても気持ちいい場所
 
 
 それから、私が空き家問題を考える中で思ったことを一つ書いておきたいと思います。それは、今後なかなか買い手がつかないような空家等の不動産物件を流通させる仕組みが必要だということです。ニーズの少ない地域の格安物件や農地付きの物件などです。
 
 この課題については、中央省庁の旗振りで空き家バンクという取り組みが全国で行われていますが、空き家バンクの制度では地元の不動産屋が扱う物件という制限がある場合があります。でも、不動産屋には売れる見込みのない物件を扱うメリットがなく、仲介手数料は不動産の販売価格を元に算出されるので、売れる見込みのない物件や格安の物件を扱っても利益にはつながらないのが現実です。仲介ではなく、買い取って販売する業務としても、売れて利益が出るという見込みがなければ難しいものと思います。
 
 今後の空家等の不動産は、おそらく高価格な物件と低価格な物件が様々に出てきます。高価格でニーズのある物件は不動産屋が進んで取り扱うとして、様々な条件から簡単にはニーズが見込めないような物件をどうするかが、今後ますます問題になるのではないかと思います。とにかく人口が減っているのですから、空き家や空き土地の増加に対してニーズは少なくなるわけです。その流通や利活用には今までにない工夫が必要になります。
 
 本来は、自治体が行う空き家バンクには、こうした格安になってしまうであろう郊外の物件などが廃墟にならないように、使い手を見つけるような機能が必要だと思います。必ずしも不動産屋を介した物件だけでなく、個人からの物件も取り扱い掲載して、取り引きのときには個別の状況を判断して、不動産屋に限らず地元の司法書士を紹介するなどの柔軟性を制度と業務に取り入れて対応していく必要があるのではないかと思います。格安物件の取り扱いに応じた業者に対応手数料を補助するなどの制度もあり得るかもしれません。
 
(2024年7月に、800万円以下の廉価な不動産の売買の仲介手数料が、33万円まで認められるようになりました。増え続ける空き家の流通促進のための取り組みです。不動産屋が廉価な空き家を取り扱うことを促進するということです。)
 
 秋田県内の自治体の空き家バンクの中で、鹿角市では1万円物件を含む格安物件が多数掲載されています。独自の取組方針があるのだと思います。不動産屋の取扱い物件でなくても空き家情報を掲載するようにしないと、空き家バンクに求められる空き家情報の質と量の取りまとめはできないだろうと思います。

 今後ますます廃墟になっていく可能性のある空き家などが、今よりももっと急速に多くなっていくのではないかと思います。空き家の相続や管理について、各種の規定や罰則を設けても、それだけで解決できる問題ではないと思います。不動産が負動産となり、やがて腐動産となる。すでにそれが現実になっているのが実情だと思いますが、今後さらにひどくなることが予想されますので、できることは何でも試みるような、積極的で迅速な対応が必要なのだろうと思います。おそらく賃貸の空室なども含めれば秋田市には万単位の空き家がすでに存在していると思いますので、問題は相当に深刻な状況になっているのだと思うのです。
 
 土地の利用に関しては、郊外地域だけでなく、市街地の住宅地でも全国で見直しが進められています。地域の維持が難しくなっているのは、郊外も市街地の住宅地も同じなのです。 急激な人口減少が進む秋田市には、市民のためになるもっと柔軟で積極的な対応が求められると思います。
 
 
広小路沿いの外堀の中に浮体式の水上遊歩道の設置工事
冬の工事なのに今季は雪がない日が多い 
確か総工費は4臆円くらいだったように記憶している
これが必要なものなのかよくわからない
製造は福岡の企業 設置は秋田の企業
 

 長く散漫な文章になってしまったと思いますが、2023年7月の洪水以降、私の店舗移転計画が白紙になってしまってから、市の業務が変わったことをきちっと書くことができずにおりました。随分時間が経ってしまいましたが、市の業務が変わったことを書いておきたいと思い、この記事を書きました。
 
 写真は本文とはあまり関係あるものではありませんが、文章だけでは寂しいので、パソコンの中から探した画像をいくつか掲載しました。 やっつけ感がありますがお許しを。

 パソコンという言葉が使われる以前の大型のコンピューターの開発と同時に進められていた卓上電子計算機の話を少々。市街化調整区域の制限を定める都市計画法が施行された 1969年(昭和44年)、この年にシャープから初めて真に卓上と言える電子計算機「QT-8D」が発売され、重量は1.4kgで価格は99,800円だったそうです。その5年前の1964年に発売された同じくシャープの卓上電子計算機「CS-10A」は、重量が25kgもあり、初任給が19,000円程度の時代に535,000円で発売されたそうです。重さと価格の面で「QT-8D」は5年間で随分進歩したと思いますが、現在の電卓やスマホと比較すれば現代社会での実用性はほとんど無いと思います。
 
 そして、同じ年に施行された都市計画法の市街化調整区域の制限が今も変わらず続いていることは、「QT-8D」が今も使われているようなものと言えるかもしれません。1969年から進歩が止まり小規模なパッチが当てられるだけで大規模なアップデートも本体の見直しもされずにいる製品がいまだに市場を支配していて、時代錯誤の古いツールをユーザーが使うことを強いているようなものだと思うのです。スマホの時代に、重さ1.4kgで99,800円の機能の乏しい電子計算機が世の中に必要とされていないことは誰にでもわかります。目に見える製品とは異なり、小難しい言葉で書かれている法令になるとその判断は急に難しくなりますが、市街化調整区域の制限は昔話の世界で作られたようなものなのではないでしょうか。

 社会の変化は近年ますます急速になっていますが、古い時代錯誤のツールの使用を強制しながら、人口減少や高齢化や空き家問題などの急速に悪化する社会問題に対応する必要性を説き、交流人口や関係人口を増やせと自治体は無理な旗振りをしていると思います。市街化調整区域では外から人が来る事業を禁じているのに、地域にとって交流人口と関係人口を増やすことが大事だと説く二枚舌が通用するはずがありません。どうしてこのような大きな矛盾が放置されているのか理解に苦しむのですが、一般的に許容できる範囲を大きく超えていると思うのです。土地利用や空き家の利活用については根本的な見直しをしていただいて、制度が地域の維持と存続に役立つようになってもらわないと困りますね。
 
 もしも都市計画法や市街化調整区域の制限の大元の法令が変わらないのであれば、秋田市役所が秋田市に必要な解釈や緩和を考えて実施するしかありません。国が法令を変えるのを待つのではなく、地域社会の存続のためには独自に考えるしかないのだと思います。それは、あまりにも内容が古いために、自治体に柔軟な運用が求められている現在の都市計画法では当然とも言えることだと思います。
 
 問題山積ですが、全国でも最も人口減少と高齢化の問題の顕在化が進む秋田で、課題に向き合いお金をかけずに制度や業務の見直しでできることもたくさんあると思います。前例踏襲にとらわれず、できることを迅速に工夫して実践していくようになってほしいと思います。自治体が自由に工夫するというのはとても難しいことですが、これからの問題の深刻さを考えると、どこかの時点で覚悟を決めて思い切った業務の見直しが必要になるのだろうと思います。新たな大規模開発を考えるよりも力を入れたほうが良いことが、様々にあるような気がいたします。
 
 都市計画法が施行された55年前には、地域の住人を対象にした日用品の販売・加工・修理という許可する事業のくくりが適切だと考えられたのかもしれません。 でも、今は生活環境・経済活動が当時とは大きく様変わりして、農家・農村の概念を前時代的に考えることはできませんし、狭い地域の中だけで成り立つような生活や経済は考えられません。人の生活の中に情報産業から生まれた仕組みが当たり前のように存在する現代社会の中で、市街化調整区域や農村部を55年前からの制限で縛ることは不適切なことだと思いますし、新たな業種や事業の形が必要なのは必然だと思います。市街化調整区域にももっと自由な活動ができる寛容さが欲しいですね
 
 人口減少と高齢化が急速に進む右肩下がりとも言える社会環境の中で、市街化調整区域や農地を大規模開発するための算段をする必要は無いと思いますし、巨額の費用を掛ける新たな「モデルシティ」を構想しなくても良いと思います。既存の街で新しい取り組みを行えば良いだけの話です。身近なところで誰しも感じることがあるのではないかと思うのですが、いま在るもので傷んでいるものがたくさんあります。既存のものの手入れをしながら、既存の街で新しい取り組みも試みるということで良いのではないでしょうか。
 
 農地や市街化調整区域での新たな大規模開発よりも、1号店舗を許可する業務に変えた延長線上にある、いま使うことのできない空き家や土地を市民が幅広く使えるように制度を変えて、既存集落を維持しながら、現代社会の中で普通に考えられる市民の活動ができることを優先し実現していただきたいと願います。それはもともとの都市計画法の目的に合致することだと思いますし、少しの工夫からできることがいくつもあるはずです。
 
 市街化調整区域の理念を活かして農地や自然を守りながら、ある程度の事業を許容する形で既存集落の維持につなげていくことは、制度の上では難しいことではないと思うのです。国任せにせずに、市や県には心から頑張って欲しいと思います。
 
 
 さて、市街化調整区域や空き家について考えるきっかけとなった、私の移転計画はその後まったく進んでおりません。一度決まった物件が、私にとってはかなり理想的なものであったので、次がそう簡単に見つかるとは思えません。でも、移転は必須のことなので、移転できる場所と出会えることを願っているところです。
 
(2024.07.07:有力な物件との出会いがあり、移転に向けて現在段取り中です。)

2023/05/26

秋田市郊外の空き家の利活用のための見直し 2023.06.01更新

 家があって小屋があって農地があって
 
2023.07.03
 この記事の中の1.の1号店舗については、見直しが実施されました。詳しくは、後日あらためて書きます。
 
 もともと都市計画法の制限が多く、市役所の業務が古いままであるために、利活用が難しくなっている秋田市の市街化調整区域の空き家ですが、本当はもっと利活用できるようにすることができます。
 
 市街化調整区域の開発などの条件を定めている都市計画法は、1968年に制定された法令で、すでに時代に合わなくなって来ています。特に、現在の急激な社会の変化や、社会問題の深刻化には、対応できなくなっているのが実情です。そのため、自治体ごとの解釈や柔軟な制度運用が認められていますし、開発許可制度の運用指針などの見直しなども行われています。
 
 ただし、都市計画法や市街化調整区域の主旨から、法令や運用指針の文章は非常に抑制的に書かれています。法令文を読んだだけでは、実際にどのように運用されているかはわかりにくく、現在では、その解釈と運用は自治体ごとに大きな違いがあるのが実情です。時代に合わせた先進的な自治体と、昔からの前例踏襲で変化することができない自治体との間では、同じ法令の運用だとは思えないくらいに違いがあります。

 その中で、秋田市は昔ながらの運用をしている自治体です。細かく見ていくと、実効性がなく論理的に破綻してしまっている制度や業務も見られます。社会環境に合わせた変化や工夫が十分とは言えない状況ですが、やる気にさえなれば、秋田市でも現行法の中で見直しを図る余地は様々にあります。
 
 私が今までに調べたり考えたりした中で、これは可能なはずだという見直しをいくつか紹介します。コストのかからない、制度と運用の工夫です。
 

1.都市計画法第34条1号の店舗の要件を見直す。

 1号店舗は、主に地域の住民を対象にするものと法令の文章にあり、秋田市では当該地域の住人で、店舗の利用客数の過半を占めなければならないという要件を定めています。公開されている文章では確認していないので、公式な文章にはなっていない、担当課内の前例踏襲の要件の可能性があります。現在の、人口が減ってしまった地域の住民だけで店を支えることは現実的では無いので、この要件だと地域の住民が利用できる店自体が成立せず、住民の利便性を確保すると言う法令の目的が損なわれることになってしまいます。法令の目的である、地域の住民の利便性の確保のためには、店舗が持続的に維持できる現実的な要件を定めることが必要になります。そのため、社会の変化に合わせて、柔軟な運用と業務を行う自治体が増えています。法令の目的を実現するためには、秋田市でも制度と業務の見直しが必要なのです。
 
 特殊能力でも無い限りは、事前に確認しようがない、当該地域の住人で客数の過半を占めなければならないとする要件を改め、地域の人に利用してもらえるように心がける事業姿勢や、地域の維持や活性化に資する方針を重視する、柔軟な対応に変えていく事が可能だと思います。地域の外からお客さんや利用者が来ることをマイナス要素とするような要件を、人口減少と空き家増加の問題に直面する地域や市民に押し付けるのは、たいへん不条理なことです。地域の維持と活性化のために、交流人口と関係人口を拡大する必要があるとされることとも矛盾します。もちろん、市街化調整区域の主旨を損なわないように、過度の開発にならないために、店舗が大規模にならないような面積制限等を設ける事なども考えられると思います。大規模にならないことは、地域の人を対象とする事を表す一つの形でもあります。また、地域に調和することも大切だと思います。
 
 他の自治体では対象となることの多い、飲食店やコンビニエンスストアが、秋田市では対象外とされています。私の仕事も対象外と言われていますが、その理由や裏付けは示されていません。他の自治体と比べて認める業種の幅が狭く、具体的に認められる業種の情報が公開されておらず、その時々の市役所職員が判断すると説明されるので、たいへん不透明で場当たり的な業務になっていることを感じます。秋田市役所としての1号店舗の対象業種を明確にして、制度の透明化を図ることも重要です。ただし、業種については法令に準じる事が必要ですので、対象となる業種はある程度限定されます。最新の情報産業分野の事業などには対応できないことが考えられます。今後も新しい分野の事業はもっと生まれてくる可能性がありますので、それらには、11号指定や12号指定などの別の枠組みで対応する事が考えられると思います。国土交通省の開発許可制度の運用指針では、余り細かい条件を定めすぎて、画一的な運用になることは望ましくないとされていますので、地域の声なども聞き、個別の状況に合わせて判断することも大切だと思います。
 
 2.都市計画法第34条11号の指定区域の開発緩和内容を見直す。

 離れ小島のような立地の11号指定区域で、第一種低層住居専用地域と同じ内容の緩和内容しか認めない秋田市の制度では、地域活性化の実効性が十分には発揮されず、住民の利便性の確保も難しくなってしまいます。11号指定区域内の空き家の賃貸住宅への用途変更は、制度開始から4年以上経過しても許可事例がありませんので、住むだけではない他の緩和の取り組みの強化も、視野に入れるべきだと思います。認められる店舗兼用住宅も、外から人が来ることがマイナス要素とされますが、すでに人が減ってしまっている地域では、その妥当性がありません。住居・店舗・事務所・宿泊施設・小規模工場などを認めている、同じ秋田都市計画区域の潟上市の例も参考にしながら、緩和内容の拡大を図るべきだと思います。
 
 独立した店舗・事業所なども認め、1号店舗の業種に含まれない、情報やデジタル分野などの新しい事業や、アート・クラフト分野のギャラリーやスタジオ・アトリエなどの、自然豊かな環境と親和性の高い施設を認めることなども、検討されるべきだと思います。市内の大学などで学んだ学生の様々な分野の起業などにも、対応できるようにすると良いと思います。1号店舗と同じく、過度の開発にならないように、面積制限を設けたり、地域に調和することを重視することも必要だと思います。 

 11号指定区域に家を建てる場合には、次のような条件があります。「配偶者など世帯構成員を含め居住可能な土地、建物を本市に所有していないこと」。秋田市内に他に家や土地を所有していると、11号指定区域に家を所有して住むことができないのです。都市計画課からは、理由についての回答も得ているのですが、その回答を見ても、このような制限をすることの合理性があるようには思えませんでした。二地域居住の促進の方針とも整合性がありませんので、この制度の見直しも必要だと思います。都市計画課からの回答の内容は、そのうちまとめて紹介したいと思います。
 
 秋田市の11号指定で建築可能な建物についてのpdfへ

 
 
3.開発許可制度の運用指針にある用途変更を活用する。

 1号店舗でも11号指定でもカバーできない場合は、用途変更の活用の取り組みで対応を図る事が有効だと思います。そのために、国土交通省の開発許可制度の運用指針にも、既存建築物の用途変更の例示があるのだと思います。この枠組みの中で秋田市が行っているのは、何故か、11号指定区域のみで空き家を賃貸住宅に用途変更することだけです。秋田市の地域活性化策と位置づけられていますが、賃貸住宅に用途変更した事例は、2019年1月の制度の運用開始から、2023年5月現在まで一件も無く、形だけのものになっています。家の所有者にとって、賃貸住宅に整備するにはお金のかかることですし、賃貸住宅の需要が見込めないことも考えられますから、積極的に賃貸住宅に用途変更する意味も理由も無いのではと思います。
 
 国土交通省の運用指針の用途変更の例示では、「等」という文字を使って自治体の柔軟な解釈が可能であるようにされています。国土交通省の担当課に確認したところ、空き家等を店舗等に用途変更することなども、自治体の解釈次第で可能です。これを利用しない手はありません。地域の維持と活性化に資するものであれば、柔軟に認める方向で良いのではないでしょうか。この用途変更の枠組みでも、情報やデジタル分野などの新しい事業や、アート・クラフト分野のギャラリーやスタジオ・アトリエなどの、自然豊かな環境と親和性の高い施設など、幅広く対象とすることが可能だと思います。産業振興部の農山村振興策でも、様々な分野と連携を図るとされています。住む、事業を営む、挑戦する。人にも地域にも、様々な取り組みにチャレンジできる可能性が生まれると思います。
 
 大阪府茨木市の事例を紹介します。秋田市とは異なり、国土交通省の開発許可制度の運用指針に書かれている内容に、ほぼ忠実な内容になっています。
 
 茨木市の市街化調整区域の既存建築物の用途変更についてのpdfへ
 
 
 
4.都市計画法第34条12号の区域指定を活用する。
 
 12号指定の活用は、より積極的な空き家対策になる可能性があります。兵庫県の実施例では、空き家が放置されずに適切に管理されることも目的の一つとして、12号指定が利用されています。空き家の除去や跡地の再利用を促進したり、空き家の柔軟な用途変更により「住民や移住者等の誰もが空家を活用し、迅速かつ円滑に起業・創業等ができる場を創出(兵庫県の資料より)」する事が可能になっています。対象業種も広く考えることができます。用途変更だけではなく、「空家対策の推進に関する特別措置法」でも求められている、適切な空き家の管理の推進も図ることができる内容なので、より総合的な空き家対策・地域の活性化対策になっていると思います。古い法令で十分に対応できないことは、自治体の責任と工夫で対応できるようにすることができるのです。
 
 12号指定にあたっては、11号指定と異なり、連たんしている住宅の戸数等の条件はありません。11号指定の対象外の市街化調整区域についても、12号の区域指定をすることが可能です。秋田市の河辺・雄和地域の例も含めて、自治体の様々な実施例を見る限り、12号指定の内容は柔軟に定めることができるようですので、地域の実情に合わせて幅広く内容の検討が可能だと思います。地域に合わせた内容の12号指定を、河辺・雄和地域以外でも活用することができれば、秋田市内の開発緩和の地域格差が軽減され、市民に対しての制度の不公平さの解消にもつながると思います。
 
 
 
 
5.二地域居住に11号指定区域の賃貸住宅を使う方針を見直す。
 
 論理的にも実態としても破綻しているものですが、11号指定区域の空き家を賃貸住宅に用途変更して、その賃貸住宅の利用を二地域居住策にしていると、都市計画課から説明されています。でも、用途変更の制度開始から4年以上の間、賃貸住宅への用途変更の事例が実は一件もなく、筋の通らない二地域居住推進策になっています。冗談のような業務ですが、担当部署からの正式な回答の中に書かれていました。
 
 また、家を借りるか買うかの選択の権利を、一方的に制限するような内容ですので、見直すべきだと思います。使われない家や土地が増えすぎて困っているのですから、複数の家を所有できる人や家族には複数所有してもらい、活用してもらったほうが良いはずです。過度の権利の制限に繋がり、実効性がない制度や対策は、見直すべきだと思います。
 
 
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 私の個人的な考えではありますが、空き家の利活用の促進のために、現在の都市計画法の枠組み内でもできるはずのことが、以上のように複数あります。どのような内容で、どのように組み合わせて実施するかが、自治体職員の腕の見せ所だと思います。秋田市では、法令の解釈や運用を見直す取り組みがほとんど実施されておらず、手付かずに近い状態ですので、その気になれば現在の職員は存分に力を発揮することができます。
 
 ただし、そのためには、市街化調整区域の維持と活性化や、空き家の利活用の方向性や理念を明確にすることが大切です。 現在の社会問題に対応し、解決を図っていく積極的な姿勢が必要になると思います。目指すものが定まれば、そのための方法が様々に考えられると思います。充実した補助金制度などの、予算措置が必要な空き家対策は難しいかもしれませんが、許認可の制度や運用は工夫次第です。
 
 
市街化調整区域の環境維持の目的が同じでも、
成長期と衰退期では必要な対策の方向性が異なる 。
 
  1968年に制定された都市計画法は、過度な開発を防ぎ地域の環境を維持するために、市街化調整区域の開発行為を厳しく制限する内容でつくられました。市役所の職員は、市街化を防止するために市街化調整区域が定められているから、空き家の利活用の柔軟な推進も認められないといった説明をする時があります。でも、市街化調整区域の真の目的は、いつの時代でも地域の環境の維持であると私は思います。法令の制定当時とは社会が大きく変わり、人口減少や高齢化の進行する現在でも、市街化調整区域が地域の環境の維持を目的として存在していることには変わりありません。そのため、人口増加や経済成長の中で、右肩上がりだった昔の成長期の社会と、人口減少や経済の縮小に直面する、現在の右肩下がりに急速に衰退する社会では、同じ法令のもとで同じ目的を遂行するために、まるで真逆とも言える対応に迫られる現実があります。上記のような図にしてみましたが、目的も法令も変わっていないのに、対策の方向を大きく変えなければ、市街化調整区域の環境の維持はできません。
 
 急速な人口減少で地域の衰退が加速している現在では、積極的に開発制限を緩和し、空き家や土地の利活用を推進しないと、地域の環境の維持ができなくなっています。市役所の職員が、前例踏襲で昔のままの考え方で業務を行っていては、法令の目的と真逆の環境の悪化を招くことになってしまいます。空き家の増加は地域の衰退や荒廃につながり、環境や景観の悪化や防災面での大きなリスクにもなります。社会環境の変化の中で、求められる業務が大きく変化していることを、市役所の職員は明確に認識する必要があると思います。私が市役所の職員と話をしてきた中では、この部分がかなり不十分だと感じています。
 
 秋田県は、日本一の人口減少率が今後も長く続き、全国で最も衰退が顕著になっていく地域です。秋田市も衰退傾向が続いていく予測ですので、地域の存続をかけて、県都として率先して、空き家対策や既存集落の維持と活性化に取り組む必要があります。
 
 すでに、地域の衰退や空き家問題は深刻な状態になっていますから、ここで制度や業務を見直すことができなければ、 ますます深刻な事態になっていくと思います。本当に恐ろしいことです。市民や地域は社会の急激で深刻な変化に直面し、何とかしたいと動いています。あとは秋田市役所次第です。 市役所には、スピード感のある迅速で的確な対応が求められます。
 
 これでいったい何ができるのだろうかと思わせる、古い法令の非常に抑制的な文章を、市民や地域のためのものに変換し、現在の社会の中で機能するようにしていくのが、市役所の仕事だと思います。古い法令の内容そのままでは、対応できないことがあるのであれば、それを放置せずに、できる方法を考え実施するのが、市役所の責任なのだと思います。理念があり、論理性があり、合理性があり、そして課題解決のために実効性もある、そういう制度と業務を、秋田市役所には期待したいですし、やる気にさえなれば、できるはずです。

2023/05/17

兵庫県の空家活用特区制度や空き家法など 2023.05.29更新

  
cgi of house Japan field rice field summer 
からAIで生成された画像・・謎の色だし家は無いし・・
 
 全国で、人口減少と空き家の増加の問題が急激に深刻さを増していますが、都市計画法の制限により、市街化調整区域の空き家の利活用などには難しい面があります。
 
 秋田市では都市計画法第34条の1号店舗の要件も昔のままで厳しく、11号指定の緩和内容も最低限のものです。(2005年に秋田市と合併した河辺・雄和地域だけに、開発緩和の充実した12号指定が設定されています。)
 
 全国を見ると、自治体によっては、現在の社会の状況に合わせて、空き家の利活用の対策を積極的に拡充する動きもあります。その中でも本格的な取り組みの代表的なものが、兵庫県の空家活用特区制度です。
 
 
 空き家や古民家を補修して活用する場合の、各種の補助金制度も充実しています。秋田県には、これと比較できるほどの補助金制度は無いと思います。また、秋田市の空き家定住促進事業の補助金制度よりも、幅広く対応できる内容で、秋田市のように市民よりも移住者を優遇する内容でもありません。
 
 市街化調整区域内の、空き家や跡地の活用や用途変更を可能とする、規制緩和にも積極的です。兵庫県の第34条12号指定を活用した取り組みの中では、空き家の用途変更について下記のように書かれています。
柔軟な空家の用途変更
空家等活用促進特別区域内の空家について、空家等活用方針に則してカフェやホテル、事務所、社宅等への用途変更を可能とする許可基準を創設することで、住民や移住者等の誰もが空家を活用し、迅速かつ円滑に起業・創業等ができる場を創出します。
 特区内の用途変更についての説明ですが、「住民や移住者等の誰もが空家を活用し、迅速かつ円滑に起業・創業等ができる場を創出します。」と言う言葉に、行政の理念やビジョンと言ったものを感じます。こういう言葉を、自分が住む秋田県や秋田市にも期待したくなります。
 
 次は大阪府茨木市の事例です。1ページで完結するわかりやすい資料です。
 
 
 2023年4月時点の茨木市の人口は28万5千人ほどですから、30万1千人ほどの秋田市と同等の規模の自治体と言えそうです。今は秋田市の人口が少し多いですが、人口推計から考えると、2030年ころには、27万人前後のほぼ同じ人口になるのではないかと思います。秋田市の人口減少率が高いということです。
 
 資料は、市街化調整区域の空き家の用途変更を、茨木市が弾力的に認める内容です。この用途変更の内容は、国土交通省の開発許可制度の運用指針に示されている、ほぼ実施例通りの内容ですので、全国の自治体で同様の用途変更を認めている例は少くありません。 
 
 秋田市にも、国土交通省の同じ指針に従って実施している用途変更があります。それは、11号指定区域の空き家を、賃貸住宅に用途変更を認めるというものです。対象を11号指定区域内の空き家に限り、認める用途変更は賃貸住宅のみなので、秋田市の運用の内容は、国土交通省の指針の実施例以下の貧弱さです。しかも、制度を導入した2019年1月から、2023年5月現在まで、賃貸住宅に用途変更した事例は一件もありません。 地域の活性化策と位置づけられていますが 、実際には機能していないということになります。
 
 また、本来であれば、11号や12号の指定区域以外の市街化調整区域でも、空き家の利活用を図ることができる用途変更の指針ですが、秋田市は11号指定区域に限ってしまっているので、せっかくの用途変更の指針を活かすことができていません。
 
 国や秋田市の資料を調べて気がつくのは、国の資料で示された実施内容の具体例以上のことは、秋田市は実施しないということです。具体例通りのことだけをやるか、あるいは具体例の一部のことだけをやるか、そのどちらかのように思います。確かに、やった体にはなりますが、実効性が不十分な結果になる事が多くなりそうな気がします。
 
 各自治体が柔軟に考えられるように、例示の中にわざわざ「等」と言う文字が使われていても、「等」の部分を広げて考えることも無いようです。せっかく柔軟に解釈や運用を行う余地があるのに、それを活用しないで業務を行うことが、秋田市には定められているかのようです。
 
 
 全国の自治体の取り組みの中では、市として線引きを廃止した例もあります。
 綾部市のpdf資料は、たいへんわかりやすく参考になります。市街化調整区域であった区域を、新たに田園居住地区と特定沿道地区に分けて地域指定をしています。田園居住地区でも様々な開発が認められており、秋田市で言うと河辺・雄和地域の11号と12号の重複指定の開発緩和内容と、ほぼ同等です。
 
 線引きの廃止は、秋田市では難しいと思いますが、県として線引きを廃止している例もあります。
 
 
 全国の自治体で、様々な取り組みが行われていますね。 都会から移住し、地方の郊外で暮らすことを考える人がいたとしたら、柔軟に家や土地の利活用ができる自治体のほうに、魅力を感じるのではないかと思います。
 
 空家活用特区制度を実現した兵庫県の人口は約538万7000人、秋田県の人口は約92万8000人です(ともに2023年4月現在)。人口減少率も、空き家率も、空き家率の増加速度も、秋田県が上回っています。財政規模が違うので、予算面で兵庫県並みというのは無理だとしても、制度や業務の工夫の面では、秋田県でもできることがたくさんあるはずです。もしも予算も少く、制度や業務の見直しや工夫も不十分となれば、先進的な他の自治体に大きく遅れを取ることになると思います。
 
 人口が少ない上に、人口減少率が全国で最も高い秋田県の県都である秋田市には、人口減少に連動する空き家増加の問題の対策を真剣に考えて、空き家の利活用のために、制度や業務の柔軟な見直しや工夫を、積極的に行ってほしいと思います。
 
 ちなみに、将来的にも秋田県の人口減少率は全国で圧倒的に一番高く、0-14歳人口の割合も15-64歳人口の割合も、将来に渡り全国最少となる予測です。そして、65歳以上の人口割合も75歳以上の人口割合も、将来に渡り圧倒的に最多となる予測です。同時に人口も減少します。 

 当然、無秩序な開発は抑制しつつ、市街地で機能的なまちづくりを推進することが大切になると思います。それと同時に、歴史・文化の継承や自然環境や農地の保全に重要な役割を果たし、自然環境や歴史的必然から形成されてきた郊外の既存集落では、地域ストックである空き家や土地などの利活用を図り、維持と活性化を推進していくことが重要になります。
 
 
 
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 全国の増え続ける空き家に対して対応を強化する必要があることから、制定された法令があります。空き家が放置されることによって起こる諸問題を防ぎ、空き家の適切な管理や処分、あるいは利活用を促進するための法令です。
 
 
 
 「空家対策の推進に関する特別措置法」、略称で「空き家法」と言われるものですが、この法令の第13条では、空き家の活用対策について下記のように書かれています。
第13条(空家等及び空家等の跡地の活用等)
第十三条 市町村は、空家等及び空家等の跡地(土地を販売し、又は賃貸する事業を行う者が販売し、又は賃貸するために所有し、又は管理するものを除く。)に関する情報の提供その他これらの活用のために必要な対策を講ずるよう努めるものとする。

 
 空き家の適正管理を市民に求めると同時に、自治体も空き家の利活用を積極的に促進する責任がありますから、市町村が空き家の活用のための具体策を講ずることが求められています。この枠組みの中で秋田市が実施しているのは、空き家バンクです。空き家バンクは、国土交通省の「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」に書かれている「空家等及びその跡地の活用の促進」の中の一例です。
 
 空き家対策を論じる協議会の活用も同じ項目で述べられていますが、秋田市では協議会の活用は行われていないようです。秋田県内のほかの自治体では、北秋田市・鹿角市・横手市などには、空き家等の対策協議会が設けられています。必ずしも協議会と言う形が必要だとは思いませんが、問題意識や危機感を持って、市民の声に耳を傾ける姿勢が、秋田市にも必要だと思います。
 
 「空家対策の推進に関する特別措置法」に合わせて、各自治体では空き家対策について条令を制定したり、各種の資料をまとめています。秋田市では下記のページや資料が該当すると思います。条令や資料は、平成26年(2014年)に制定あるいは作成されたものです。



 
 都市計画法の開発許可制度とは別の視点から制定された法令に基づいているので、上記のページを公開しているのは、秋田市総務部 防災安全対策課です。空き家問題は、地域の防災や防犯上の問題でもあるのです。
 
 秋田市空き家対策基本方針の中には、「・・賃貸市場にも売却市場にも出されることなく、手入れもされないまま朽ち果てていく住宅が、外部不経済をもたらす可能性が高く、空き家のうち、その他住宅に焦点を当てた対策が必要と考えられる。」と書かれていますが、活用されない家は、いろいろ周囲にもマイナスの影響を与える可能性が高くなるから、対策を考えなくちゃねと言うことです。

 同じく秋田市空き家対策基本方針の中に、「空き家の非流動化要因」の記述があります。
(1) 建物等が老朽化して使用できない
(2) 借り手、買い手がいない
(3) 税制上の理由で取り壊しを控えている
(4) 遠方に住んでおり維持管理ができない
(5) 修繕して使用したいが費用が不足している
(6) 取り壊したいが費用が不足している
(7) いつか子供や家族が使用するかもしれないので、他人に貸したくない
(8) 資産として保有していたい
 上記に加えて、秋田市の開発許可制度の運用の制限のために、市街化調整区域の空き家の利活用が進まない制度上の問題もあることを、書き加えるべきだと思います。買い手や使い手がいるのに、利活用が進まない制度上の問題は、実に大きなものだと思います。
 
 秋田市空き家対策基本方針の中で、ほかに私が気になる記述は以下の3点です。
基本方針2 空き家の利活用
対応案2-1 利活用による既存の空き家数の削減
(1) 空き家バンクを新設するとともに、空き家所有者への呼びかけにより、空き家の利活用を促進し、空き家数を減らす。

基本方針5 空き家対策への全庁的な取り組み 
対応案5-1 空き家に関する役割分担と担当部署の明確化
 (1) 市民からの相談窓口と対応における役割分担・担当部署を明確にし、対応の円滑化と市民サービスの向上を図る
対応案5-2 空き家対策における空き家に関する相談・問題対処
 (1) 空き家に関する相談・問題について、関係課所室の職員(併任)で構成する対策チーム等で対処する。
 
 基本方針2の2−1の(1)の空き家バンクと空家所有者への呼びかけで、空き家の利活用が促進されて、空き家数を減らすことができているのでしょうか? 空き家バンクのページも何度か見ていますが、動きは低調のように見えます。空き家は増え続けており、空き家の利活用の取り組みとしては、不十分なのではないかと思うのですが・・。
 
 基本方針5の5−1の全庁的な取り組みは、何か実現しているのでしょうか? 私の実感としては、部署間での調整などが十分に行われておらず、市役所として一貫性のある空き家対策の制度や業務が構築されていないと感じます。
 
 また、5−2については、私たちが市街化調整区域の既存集落の空き家の利活用を図りたくても、市役所からは禁止されるばかりですが、空き家の利活用をどうすれば実現できるのか、一緒に考えてくれる相談窓口・対策チームは、どこにあるのでしょうか? 空き家の急激な増加・地域の維持や活性化・移住や起業に対する対応・防災や防犯上の問題など、単に都市計画法の規制だけの問題ではない空き家の利活用について、市民とともに解決策を考えるチームや窓口があるのならば、すぐにでも利用し相談したいと思います。

 秋田市の空き家対策には疑問があり、十分なものだとは思えませんが、 秋田市役所も何も対策を講じていないわけではありません。
 
  秋田市空き家対策基本方針が作成された平成26年(2014年)には、都市計画法第34条11号に基づいて、11号指定区域内に住居と兼用住居の建築を認めるようになりました。ただし、考えられる限り最低限の緩和と言える内容のもので、先行して同制度の実施を導入していたお隣の潟上市と比べても、かなり貧弱な内容です。
 
 
 また、空き家対策の一環として、空き家の購入やリフォームの補助金等の施策を実施しています。
 
 
 この補助金事業では、移住者は優遇され、補助金の額も多くなっています。これは、移住促進策の一つでもあるとは思いますが、秋田市に居住し長く秋田市に貢献しているはずの市民にとって、公平性に欠ける制度だと思います。
 
 また、利用するためにはいくつもの要件に当てはまる必要がありますが、市内の人が市街化調整区域の既存集落の空き家を購入したり、リフォームしたりすることは対象外だと思われますので、人と地域に不公平な制度運用になっているのではないかと思います。   
 
 補助金は期待しませんが、せめて市街化調整区域や既存集落の空き家の利活用を積極的に認めてくれることを、秋田市には切に願います。利活用が遅れるほどに家は傷み、補修にお金がかかります。そして、秋田市空き家対策基本方針の中でも懸念されている、「手入れもされないまま朽ち果てていく住宅」になる可能性が、日毎に高くなっていきます。
 
 
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 柔軟で先進的な県外の事例と、秋田市の空き家対策の一部を見てみました。人口減少と空き家の増加が深刻なはずの秋田市で、秋田市役所の空き家の利活用の取り組みは、消極的なものだと思います。
 
 半世紀以上前から、市街化調整区域の店舗についての説明を一貫して変えていないと言う、市の職員の言葉も聞きました。秋田市は、独自に古いまま路線を選択しているように見えるのですが、それが不思議でなりません。できることならば、県外の自治体の良いところは見習って、秋田市の古い要件も見直して、柔軟な業務を行ってほしいと思います。
 
 兵庫県の空家活用特区制度のような、本格的な施策を秋田で実現するのは難しいと思います。でも、すでに全国の自治体で実施されているように、第34条の1号店舗の要件の見直しや、11号指定区域内での開発緩和内容の見直しを行い、用途変更の対象や内容を拡張するだけでも、市街化調整区域の空き屋の利活用の施策を、柔軟で実効性のあるものに変えていくことができます。
 
 秋田県が秋田都市計画区域として、秋田市と潟上市を一体的に指定していますが、潟上市の11号指定区域の開発緩和内容は、秋田市よりも柔軟で幅広いものです。同じ都市計画区域として、秋田市も潟上市のように柔軟な開発緩和を、検討して然るべきだと思います。あるいは、河辺・雄和地域以外の秋田市の各地域でも、12号指定を活用することも可能だと思います。
 
 
 市街化調整区域の空家の利活用について、できない、やらせないと言う前提が秋田市役所にはあるように感じます。でも、できる、もっと活用を推進すると言う前提で考えることが、大切なのではないでしょうか。
 
 市街化調整区域は、都市計画法が施行された頃の、昭和の過度の大規模開発を抑制し、農地や自然環境を維持する事を目的として定められていますので、 法令の文章は基本的に抑制的な書き方になっています。それは、開発許可制度の運用指針でも同じです。その文章を、地域の実情に合わせて、どのように解釈して制度を整え業務を行っていくのかが、行政の腕の見せ所だと思います。
 
 空き家の持ち主からの空き家を使ってほしいという声に、その空き家を活用したいという市民の声に、地域で増加する空き家が人に利用されることを望む地域の声に、応えてほしいと思います。
 
 様々な制限のもとになっている、都市計画法の法令や運用指針の文章を見ると、「農家」「分家」「二男」「三男」などの言葉が見られますので、昔ながらの家制度を基にした考え方があることがわかります。家や土地が農家等の人にしか使えない事をさして、「属人性」という言葉も使われます。
 
 家や土地を代々相続して、先祖から受け継いだ農地を子孫が耕し、本家の回りに分家があり、二男や三男の家も近くに造られると言う、すでに現在では難しくなっている人の生き方や価値観が、法令に反映されている事を感じます。
 
 それだけに、大きく社会の状況が変わっている現在では、残念ながら時代に合わない事が多くなっていると思います。法令を根本から変えるのは時間もかかり難しいことですから、法令の解釈や制度の運用を、弾力的で柔軟なものにすることが必要になっています。
 
 活用できる空き家は積極的に活用していかないと、家が傷んで使えなくなってしまいますし、年数が経つと所有者が誰なのかわからなくなってしまったり、相続関係が複雑化して、行政の各種の手続きの負担も大きくなっていく可能性が高まります。
 
 実際に私も経験したことがありますが、すでに亡くなっている祖父の名義の土地があり、その土地はほかの人が農地として使っていました。国土交通省がその土地を防災事業で使う必要があったのですが、土地の使用者と土地の名義が異なっている上に、土地の名義上の相続権者は全国に散らばり孫にまで及び、権利関係を整理し相続権の放棄を全員から取り付けるのに数年がかりでした。評価額70万円ほどの土地でしたが、業務に携わった複数の国土交通省の職員の人件費のほうがはるかに高いと、担当職員と話しをした記憶があります。

 放置された家や土地の権利関係を、後から整理して解決するためには、多くの時間と労力と人件費を含めた多額の費用がかかります。そういった事を防止するための法整備も進められていますが、未利用の家や土地のために、将来のコストを肥大化させないためには、今使えるものを確実に使えるようにしていく事が、とても大切だと思います。
 
 また、コストというキーワードで考えれば、私たちのように市街化調整区域の空き家を利活用しようとする人間は、お金のかからない地域おこし協力隊員みたいなものです。年間一人あたり何百万円もかけて、任期が終わったら定住率が秋田県では5割ほどの協力隊員とは異なり、空き家の活用が許可されれば、私たちは即座に地域での継続的な活動を始める事ができます。自ら事業を行う事ができるからこそ、継続性も生まれるのです。もちろん、地域の維持と活性化や、交流人口や関係人口の拡大に貢献することができると思います。
 
 募集して外から協力隊員に来てもらうのもけっこうですが、いまここに、足元の市内に人材がいるのですから、市民の資産であり地域の資産でもある空き家を、市民が利活用することを認めてほしいと心から思います。それは、人のためにも地域のためにも秋田市のためにもなるはずです。

 私は最近、市役所ならぬ「市厄所」と言う言葉が思い浮かぶ事があります。市民と地域の健全で健康的な活動の足を引っ張り、悩ませ苦しめるのは、まさに「厄」です。
 
 できることなら、市民と市役所が協力して、お互いに「役」に立つ存在になれることを願います。空き家の利活用という喫緊の社会問題への取り組みの中で、それが実現できないものでしょうか。