2023/05/17

兵庫県の空家活用特区制度や空き家法など 2023.05.29更新

  
cgi of house Japan field rice field summer 
からAIで生成された画像・・謎の色だし家は無いし・・
 
 全国で、人口減少と空き家の増加の問題が急激に深刻さを増していますが、都市計画法の制限により、市街化調整区域の空き家の利活用などには難しい面があります。
 
 秋田市では都市計画法第34条の1号店舗の要件も昔のままで厳しく、11号指定の緩和内容も最低限のものです。(2005年に秋田市と合併した河辺・雄和地域だけに、開発緩和の充実した12号指定が設定されています。)
 
 全国を見ると、自治体によっては、現在の社会の状況に合わせて、空き家の利活用の対策を積極的に拡充する動きもあります。その中でも本格的な取り組みの代表的なものが、兵庫県の空家活用特区制度です。
 
 
 空き家や古民家を補修して活用する場合の、各種の補助金制度も充実しています。秋田県には、これと比較できるほどの補助金制度は無いと思います。また、秋田市の空き家定住促進事業の補助金制度よりも、幅広く対応できる内容で、秋田市のように市民よりも移住者を優遇する内容でもありません。
 
 市街化調整区域内の、空き家や跡地の活用や用途変更を可能とする、規制緩和にも積極的です。兵庫県の第34条12号指定を活用した取り組みの中では、空き家の用途変更について下記のように書かれています。
柔軟な空家の用途変更
空家等活用促進特別区域内の空家について、空家等活用方針に則してカフェやホテル、事務所、社宅等への用途変更を可能とする許可基準を創設することで、住民や移住者等の誰もが空家を活用し、迅速かつ円滑に起業・創業等ができる場を創出します。
 特区内の用途変更についての説明ですが、「住民や移住者等の誰もが空家を活用し、迅速かつ円滑に起業・創業等ができる場を創出します。」と言う言葉に、行政の理念やビジョンと言ったものを感じます。こういう言葉を、自分が住む秋田県や秋田市にも期待したくなります。
 
 次は大阪府茨木市の事例です。1ページで完結するわかりやすい資料です。
 
 
 2023年4月時点の茨木市の人口は28万5千人ほどですから、30万1千人ほどの秋田市と同等の規模の自治体と言えそうです。今は秋田市の人口が少し多いですが、人口推計から考えると、2030年ころには、27万人前後のほぼ同じ人口になるのではないかと思います。秋田市の人口減少率が高いということです。
 
 資料は、市街化調整区域の空き家の用途変更を、茨木市が弾力的に認める内容です。この用途変更の内容は、国土交通省の開発許可制度の運用指針に示されている、ほぼ実施例通りの内容ですので、全国の自治体で同様の用途変更を認めている例は少くありません。 
 
 秋田市にも、国土交通省の同じ指針に従って実施している用途変更があります。それは、11号指定区域の空き家を、賃貸住宅に用途変更を認めるというものです。対象を11号指定区域内の空き家に限り、認める用途変更は賃貸住宅のみなので、秋田市の運用の内容は、国土交通省の指針の実施例以下の貧弱さです。しかも、制度を導入した2019年1月から、2023年5月現在まで、賃貸住宅に用途変更した事例は一件もありません。 地域の活性化策と位置づけられていますが 、実際には機能していないということになります。
 
 また、本来であれば、11号や12号の指定区域以外の市街化調整区域でも、空き家の利活用を図ることができる用途変更の指針ですが、秋田市は11号指定区域に限ってしまっているので、せっかくの用途変更の指針を活かすことができていません。
 
 国や秋田市の資料を調べて気がつくのは、国の資料で示された実施内容の具体例以上のことは、秋田市は実施しないということです。具体例通りのことだけをやるか、あるいは具体例の一部のことだけをやるか、そのどちらかのように思います。確かに、やった体にはなりますが、実効性が不十分な結果になる事が多くなりそうな気がします。
 
 各自治体が柔軟に考えられるように、例示の中にわざわざ「等」と言う文字が使われていても、「等」の部分を広げて考えることも無いようです。せっかく柔軟に解釈や運用を行う余地があるのに、それを活用しないで業務を行うことが、秋田市には定められているかのようです。
 
 
 全国の自治体の取り組みの中では、市として線引きを廃止した例もあります。
 綾部市のpdf資料は、たいへんわかりやすく参考になります。市街化調整区域であった区域を、新たに田園居住地区と特定沿道地区に分けて地域指定をしています。田園居住地区でも様々な開発が認められており、秋田市で言うと河辺・雄和地域の11号と12号の重複指定の開発緩和内容と、ほぼ同等です。
 
 線引きの廃止は、秋田市では難しいと思いますが、県として線引きを廃止している例もあります。
 
 
 全国の自治体で、様々な取り組みが行われていますね。 都会から移住し、地方の郊外で暮らすことを考える人がいたとしたら、柔軟に家や土地の利活用ができる自治体のほうに、魅力を感じるのではないかと思います。
 
 空家活用特区制度を実現した兵庫県の人口は約538万7000人、秋田県の人口は約92万8000人です(ともに2023年4月現在)。人口減少率も、空き家率も、空き家率の増加速度も、秋田県が上回っています。財政規模が違うので、予算面で兵庫県並みというのは無理だとしても、制度や業務の工夫の面では、秋田県でもできることがたくさんあるはずです。もしも予算も少く、制度や業務の見直しや工夫も不十分となれば、先進的な他の自治体に大きく遅れを取ることになると思います。
 
 人口が少ない上に、人口減少率が全国で最も高い秋田県の県都である秋田市には、人口減少に連動する空き家増加の問題の対策を真剣に考えて、空き家の利活用のために、制度や業務の柔軟な見直しや工夫を、積極的に行ってほしいと思います。
 
 ちなみに、将来的にも秋田県の人口減少率は全国で圧倒的に一番高く、0-14歳人口の割合も15-64歳人口の割合も、将来に渡り全国最少となる予測です。そして、65歳以上の人口割合も75歳以上の人口割合も、将来に渡り圧倒的に最多となる予測です。同時に人口も減少します。 

 当然、無秩序な開発は抑制しつつ、市街地で機能的なまちづくりを推進することが大切になると思います。それと同時に、歴史・文化の継承や自然環境や農地の保全に重要な役割を果たし、自然環境や歴史的必然から形成されてきた郊外の既存集落では、地域ストックである空き家や土地などの利活用を図り、維持と活性化を推進していくことが重要になります。
 
 
 
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 全国の増え続ける空き家に対して対応を強化する必要があることから、制定された法令があります。空き家が放置されることによって起こる諸問題を防ぎ、空き家の適切な管理や処分、あるいは利活用を促進するための法令です。
 
 
 
 「空家対策の推進に関する特別措置法」、略称で「空き家法」と言われるものですが、この法令の第13条では、空き家の活用対策について下記のように書かれています。
第13条(空家等及び空家等の跡地の活用等)
第十三条 市町村は、空家等及び空家等の跡地(土地を販売し、又は賃貸する事業を行う者が販売し、又は賃貸するために所有し、又は管理するものを除く。)に関する情報の提供その他これらの活用のために必要な対策を講ずるよう努めるものとする。

 
 空き家の適正管理を市民に求めると同時に、自治体も空き家の利活用を積極的に促進する責任がありますから、市町村が空き家の活用のための具体策を講ずることが求められています。この枠組みの中で秋田市が実施しているのは、空き家バンクです。空き家バンクは、国土交通省の「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」に書かれている「空家等及びその跡地の活用の促進」の中の一例です。
 
 空き家対策を論じる協議会の活用も同じ項目で述べられていますが、秋田市では協議会の活用は行われていないようです。秋田県内のほかの自治体では、北秋田市・鹿角市・横手市などには、空き家等の対策協議会が設けられています。必ずしも協議会と言う形が必要だとは思いませんが、問題意識や危機感を持って、市民の声に耳を傾ける姿勢が、秋田市にも必要だと思います。
 
 「空家対策の推進に関する特別措置法」に合わせて、各自治体では空き家対策について条令を制定したり、各種の資料をまとめています。秋田市では下記のページや資料が該当すると思います。条令や資料は、平成26年(2014年)に制定あるいは作成されたものです。



 
 都市計画法の開発許可制度とは別の視点から制定された法令に基づいているので、上記のページを公開しているのは、秋田市総務部 防災安全対策課です。空き家問題は、地域の防災や防犯上の問題でもあるのです。
 
 秋田市空き家対策基本方針の中には、「・・賃貸市場にも売却市場にも出されることなく、手入れもされないまま朽ち果てていく住宅が、外部不経済をもたらす可能性が高く、空き家のうち、その他住宅に焦点を当てた対策が必要と考えられる。」と書かれていますが、活用されない家は、いろいろ周囲にもマイナスの影響を与える可能性が高くなるから、対策を考えなくちゃねと言うことです。

 同じく秋田市空き家対策基本方針の中に、「空き家の非流動化要因」の記述があります。
(1) 建物等が老朽化して使用できない
(2) 借り手、買い手がいない
(3) 税制上の理由で取り壊しを控えている
(4) 遠方に住んでおり維持管理ができない
(5) 修繕して使用したいが費用が不足している
(6) 取り壊したいが費用が不足している
(7) いつか子供や家族が使用するかもしれないので、他人に貸したくない
(8) 資産として保有していたい
 上記に加えて、秋田市の開発許可制度の運用の制限のために、市街化調整区域の空き家の利活用が進まない制度上の問題もあることを、書き加えるべきだと思います。買い手や使い手がいるのに、利活用が進まない制度上の問題は、実に大きなものだと思います。
 
 秋田市空き家対策基本方針の中で、ほかに私が気になる記述は以下の3点です。
基本方針2 空き家の利活用
対応案2-1 利活用による既存の空き家数の削減
(1) 空き家バンクを新設するとともに、空き家所有者への呼びかけにより、空き家の利活用を促進し、空き家数を減らす。

基本方針5 空き家対策への全庁的な取り組み 
対応案5-1 空き家に関する役割分担と担当部署の明確化
 (1) 市民からの相談窓口と対応における役割分担・担当部署を明確にし、対応の円滑化と市民サービスの向上を図る
対応案5-2 空き家対策における空き家に関する相談・問題対処
 (1) 空き家に関する相談・問題について、関係課所室の職員(併任)で構成する対策チーム等で対処する。
 
 基本方針2の2−1の(1)の空き家バンクと空家所有者への呼びかけで、空き家の利活用が促進されて、空き家数を減らすことができているのでしょうか? 空き家バンクのページも何度か見ていますが、動きは低調のように見えます。空き家は増え続けており、空き家の利活用の取り組みとしては、不十分なのではないかと思うのですが・・。
 
 基本方針5の5−1の全庁的な取り組みは、何か実現しているのでしょうか? 私の実感としては、部署間での調整などが十分に行われておらず、市役所として一貫性のある空き家対策の制度や業務が構築されていないと感じます。
 
 また、5−2については、私たちが市街化調整区域の既存集落の空き家の利活用を図りたくても、市役所からは禁止されるばかりですが、空き家の利活用をどうすれば実現できるのか、一緒に考えてくれる相談窓口・対策チームは、どこにあるのでしょうか? 空き家の急激な増加・地域の維持や活性化・移住や起業に対する対応・防災や防犯上の問題など、単に都市計画法の規制だけの問題ではない空き家の利活用について、市民とともに解決策を考えるチームや窓口があるのならば、すぐにでも利用し相談したいと思います。

 秋田市の空き家対策には疑問があり、十分なものだとは思えませんが、 秋田市役所も何も対策を講じていないわけではありません。
 
  秋田市空き家対策基本方針が作成された平成26年(2014年)には、都市計画法第34条11号に基づいて、11号指定区域内に住居と兼用住居の建築を認めるようになりました。ただし、考えられる限り最低限の緩和と言える内容のもので、先行して同制度の実施を導入していたお隣の潟上市と比べても、かなり貧弱な内容です。
 
 
 また、空き家対策の一環として、空き家の購入やリフォームの補助金等の施策を実施しています。
 
 
 この補助金事業では、移住者は優遇され、補助金の額も多くなっています。これは、移住促進策の一つでもあるとは思いますが、秋田市に居住し長く秋田市に貢献しているはずの市民にとって、公平性に欠ける制度だと思います。
 
 また、利用するためにはいくつもの要件に当てはまる必要がありますが、市内の人が市街化調整区域の既存集落の空き家を購入したり、リフォームしたりすることは対象外だと思われますので、人と地域に不公平な制度運用になっているのではないかと思います。   
 
 補助金は期待しませんが、せめて市街化調整区域や既存集落の空き家の利活用を積極的に認めてくれることを、秋田市には切に願います。利活用が遅れるほどに家は傷み、補修にお金がかかります。そして、秋田市空き家対策基本方針の中でも懸念されている、「手入れもされないまま朽ち果てていく住宅」になる可能性が、日毎に高くなっていきます。
 
 
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 柔軟で先進的な県外の事例と、秋田市の空き家対策の一部を見てみました。人口減少と空き家の増加が深刻なはずの秋田市で、秋田市役所の空き家の利活用の取り組みは、消極的なものだと思います。
 
 半世紀以上前から、市街化調整区域の店舗についての説明を一貫して変えていないと言う、市の職員の言葉も聞きました。秋田市は、独自に古いまま路線を選択しているように見えるのですが、それが不思議でなりません。できることならば、県外の自治体の良いところは見習って、秋田市の古い要件も見直して、柔軟な業務を行ってほしいと思います。
 
 兵庫県の空家活用特区制度のような、本格的な施策を秋田で実現するのは難しいと思います。でも、すでに全国の自治体で実施されているように、第34条の1号店舗の要件の見直しや、11号指定区域内での開発緩和内容の見直しを行い、用途変更の対象や内容を拡張するだけでも、市街化調整区域の空き屋の利活用の施策を、柔軟で実効性のあるものに変えていくことができます。
 
 秋田県が秋田都市計画区域として、秋田市と潟上市を一体的に指定していますが、潟上市の11号指定区域の開発緩和内容は、秋田市よりも柔軟で幅広いものです。同じ都市計画区域として、秋田市も潟上市のように柔軟な開発緩和を、検討して然るべきだと思います。あるいは、河辺・雄和地域以外の秋田市の各地域でも、12号指定を活用することも可能だと思います。
 
 
 市街化調整区域の空家の利活用について、できない、やらせないと言う前提が秋田市役所にはあるように感じます。でも、できる、もっと活用を推進すると言う前提で考えることが、大切なのではないでしょうか。
 
 市街化調整区域は、都市計画法が施行された頃の、昭和の過度の大規模開発を抑制し、農地や自然環境を維持する事を目的として定められていますので、 法令の文章は基本的に抑制的な書き方になっています。それは、開発許可制度の運用指針でも同じです。その文章を、地域の実情に合わせて、どのように解釈して制度を整え業務を行っていくのかが、行政の腕の見せ所だと思います。
 
 空き家の持ち主からの空き家を使ってほしいという声に、その空き家を活用したいという市民の声に、地域で増加する空き家が人に利用されることを望む地域の声に、応えてほしいと思います。
 
 様々な制限のもとになっている、都市計画法の法令や運用指針の文章を見ると、「農家」「分家」「二男」「三男」などの言葉が見られますので、昔ながらの家制度を基にした考え方があることがわかります。家や土地が農家等の人にしか使えない事をさして、「属人性」という言葉も使われます。
 
 家や土地を代々相続して、先祖から受け継いだ農地を子孫が耕し、本家の回りに分家があり、二男や三男の家も近くに造られると言う、すでに現在では難しくなっている人の生き方や価値観が、法令に反映されている事を感じます。
 
 それだけに、大きく社会の状況が変わっている現在では、残念ながら時代に合わない事が多くなっていると思います。法令を根本から変えるのは時間もかかり難しいことですから、法令の解釈や制度の運用を、弾力的で柔軟なものにすることが必要になっています。
 
 活用できる空き家は積極的に活用していかないと、家が傷んで使えなくなってしまいますし、年数が経つと所有者が誰なのかわからなくなってしまったり、相続関係が複雑化して、行政の各種の手続きの負担も大きくなっていく可能性が高まります。
 
 実際に私も経験したことがありますが、すでに亡くなっている祖父の名義の土地があり、その土地はほかの人が農地として使っていました。国土交通省がその土地を防災事業で使う必要があったのですが、土地の使用者と土地の名義が異なっている上に、土地の名義上の相続権者は全国に散らばり孫にまで及び、権利関係を整理し相続権の放棄を全員から取り付けるのに数年がかりでした。評価額70万円ほどの土地でしたが、業務に携わった複数の国土交通省の職員の人件費のほうがはるかに高いと、担当職員と話しをした記憶があります。

 放置された家や土地の権利関係を、後から整理して解決するためには、多くの時間と労力と人件費を含めた多額の費用がかかります。そういった事を防止するための法整備も進められていますが、未利用の家や土地のために、将来のコストを肥大化させないためには、今使えるものを確実に使えるようにしていく事が、とても大切だと思います。
 
 また、コストというキーワードで考えれば、私たちのように市街化調整区域の空き家を利活用しようとする人間は、お金のかからない地域おこし協力隊員みたいなものです。年間一人あたり何百万円もかけて、任期が終わったら定住率が秋田県では5割ほどの協力隊員とは異なり、空き家の活用が許可されれば、私たちは即座に地域での継続的な活動を始める事ができます。自ら事業を行う事ができるからこそ、継続性も生まれるのです。もちろん、地域の維持と活性化や、交流人口や関係人口の拡大に貢献することができると思います。
 
 募集して外から協力隊員に来てもらうのもけっこうですが、いまここに、足元の市内に人材がいるのですから、市民の資産であり地域の資産でもある空き家を、市民が利活用することを認めてほしいと心から思います。それは、人のためにも地域のためにも秋田市のためにもなるはずです。

 私は最近、市役所ならぬ「市厄所」と言う言葉が思い浮かぶ事があります。市民と地域の健全で健康的な活動の足を引っ張り、悩ませ苦しめるのは、まさに「厄」です。
 
 できることなら、市民と市役所が協力して、お互いに「役」に立つ存在になれることを願います。空き家の利活用という喫緊の社会問題への取り組みの中で、それが実現できないものでしょうか。