2023/05/11

秋田市の市街化調整区域の空き家の利活用の制限 2023.05.25更新

 
 Residential area on the outskirts of a local city in Japan
からAIで生成された画像・・日本の郊外の住宅地!?
 
*この記事の情報は、個人的にまとめたものですので、間違いがあるかもしれません。詳細は秋田市役所にご確認ください。

 秋田市郊外の市街化調整区域の空き家の利活用については、多くの制限があります。人口減少や高齢化や空き家の増加などが問題となっている現在の社会で暮らしている者として、これは問題なくできるだろうと思うことでも、実際にはできないことが多くあります。
 
 もともと市街化調整区域には各種の制限がありますが、都市計画法も時代とともに見直しが行われたり、開発許可制度には弾力的な運用が導入されてきています。 同じ法令を基にしていても、現在では自治体によって解釈や運用状態にはかなりの違いがあります。その中で、秋田市の法令の解釈は古くからの前例踏襲を重視しており、緩和的運用にも消極的な姿勢が目立つものだと思います。
 
 
 上記の秋田市のページを見ると、できそうなことが何かありそうな気になりますが、実際には個人が真剣に空き家の利活用を考えても、秋田市役所からは許可されるものが少いのが実情です。どのような制限があるのかを、私の経験をもとに以下にまとめてみました。
 
 秋田市への移住や二地域居住などを検討される方にも、参考にしていただければと思います。
 
 
【住みたい場合】
 
◯市街化調整区域の家が農家住宅等になっている場合は、農家などの人しか住むことができません。一般の人が空き家を利活用したいと思っても、農家住宅を一般住宅に用途変更することも認められませんので、農地を取得して就農という形を取り、農家住宅のまま利用する必要があります。その場合は、農業委員会から発行される耕作証明書が必要となり、1000㎡以上の農地を耕作していることが条件になります。
 
◯それとは別に、昭和46年の市街化調整区域の指定が行われる以前から利用されていた家や宅地は、線引き前住宅などと呼ばれ、一般の人でも利活用できる可能性があります。その場合、住居として使うことはできますが、店舗などにはできません。
 
◯都市計画法第34条11号指定区域では、農家などではない一般の人でも家を建てて住むことができます。既存の空き家を取得して住むこともできます。ただし、本人や家族構成員が秋田市内に他に家や土地を所有している場合は対象外になり許可されません。つまり、秋田市内の市街地と11号指定区域での二地域居住は、実現が困難になっています。その一方で、秋田市の各種の計画書では、市街化調整区域の空き家等を利用して、市内外の二地域居住を推進すると書かれています。この矛盾の理由はわかりません。
 
◯2023.05.22に、市役所から上記の矛盾についての質問の回答を受け取りました。驚くことに、市内の二地域居住希望者は、11号指定区域の賃貸住宅を借りて二地域居住をすればいいという推進策を行っているとのことでした。11号指定区域の空き家を賃貸住宅に用途変更を認める制度は、2019年1月に開始されました。ところが、それから2023年5月現在に至るまで、賃貸住宅に用途変更した事例は一件もありません。用途変更のニーズもなく、二地域居住の推進策の前提も成り立たない、完全に破綻している業務ということになります。そもそも、同じお金を払うならば、借りるよりも自己の所有となる形の選択肢もあるべきです。それができないのは、市役所による過度の市民の権利の侵害なのではないかと思います。実効性が無い制度運用と業務のために、市民の権利を侵害する、秋田市はとても変わった自治体です。
 
 
【空き家を活用して事業を行いたい場合】
 
◯昭和46年の市街化調整区域の指定前から、事業に使われてきた土地や建物は、事業に利活用できる可能性があるものと思われます。詳細はわかりませんが、おそらく細かい規則があるものと思います。
 
◯一般に市街化調整区域の空き家を店舗などに利活用する場合、都市計画法第34条1号の店舗の適用が考えられます。 日用品の販売・加工・修理などの店舗が認められますが、日用品の定義や対象となる業種は秋田市では定められておらず、そのときどき市役所の職員が判断することになっています。他の自治体では日本標準産業分類を用いて業種の判断をすることが少くないようですが、秋田市役所と他の自治体の業務は関係ありませんので、他の自治体の情報を見て該当すると判断することは危険です。他の自治体では認められることの多い飲食店や、コンビニエンスストアなども、秋田市役所では対象外とされています。理容店・美容院・自動車修理工場などは、秋田市でも許可の対象業種とされていますが、秋田市役所で認められる業種は不透明であり、かなり少ないものだと考えておいたほうが無難だと思います。
 
◯都市計画課からの説明で、私が真っ先に言われたのは、外から顧客が来る事業内容の店舗は認めることはできないと言うことでした。秋田市の1号店舗の要件として、店舗を設ける当該地域の住民で客数の過半を占めることが必要とされます。(私は、売上の過半という説明も受けましたが、後に客数の過半が正しいと訂正されました。)人口減少と高齢化が進み、空き家が多くなり既存の店舗がすでに廃業している場合が多い秋田市の市街化調整区域では、この条件をクリアすることは非常に難しいと思われます。ちなみに、市役所の都市計画課からは、顧客名簿を確認すると言われます。事業計画や資金計画まで確認する可能性があるとも言われます。個人情報の取り扱いなどには細心の注意を求められる時代ですが、どういった権限で確認するのかはわかりません。
 
◯地域の活性化のためには交流人口や関係人口の拡大を図ることが必要とされていますし、そういった活動も念頭に市街化調整区域の空き家の利活用を考える人もいらっしゃると思います。でも、秋田市では事業を通じて地域の外から人が来ることがマイナスの要素と見なされますので、交流人口や関係人口の拡大を図ることも制度的には難しくなっています。  

 
◯11号指定区域内では、店舗兼用住居は認められます。家の床面積の1/2以下で50㎡以内の兼用店舗や兼用事務所が認められます。単独の店舗や事務所は認められません。可否は第一種低層住居専用地域の要件で判断されます。下記に認められる内容を示しますが、全て「周辺地域」の住人を対象とした事業内容でなくてはなりません。「周辺地域」とはどの程度の範囲の事を言うのかは定められておらず、そのときどき市役所の職員が判断します。また日用品の販売の業種も定められておらず、そのときどき市役所の職員が該当するかどうか判断します。塾や各種教室も、地域の外から利用者が来る想定はダメです。アトリエや工房は作品を作るだけは認められますが、外からお客さんが来たりそこで売ったりするのは認められません。透明性に欠ける業務ですし、非現実的な制度だと思うのですが、私が確認した限りでは秋田市の制度と運用はこのようになっています。
▪ 事務所(法令で指定する汚物運搬用・危険物運搬用等の自動車のための駐車施設を同一敷地内に設けて業務を運営するものを除く。)
 
▪ 日用品の販売を主たる目的とする店舗又は食堂若しくは喫茶店 
 
▪ 理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋等 
 
▪ 洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店等(原動機設備は出力総計が0.75kW以下) 
 
▪ 自家販売のために食品製造業(食品加工業を含む)を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋等(原動機設備は出力総計が0.75kW以下) 
 
▪ 学習塾、華道教室、囲碁教室等 
 
▪ 美術品又は工芸品を製作するためのアトリエ又は工房(原動機設備は出力総計が0.75kW以下) 

◯秋田県内では、秋田市と潟上市だけに市街化調整区域があります。潟上市では、同じ11号指定区域でも、住居の他に店舗・事務所・宿泊施設・小規模工場などが認められることになっています。不思議に思われる人が多いと思いますが、制度の運用は自治体次第ですので、お隣りの潟上市で認められることであっても、秋田市では認められません。11号指定の枠組みの中で秋田市で認められるのは、住居と兼用住居のみです。
 
 
◯秋田市の市街化調整区域の中でも、河辺・雄和地域の11号指定区域だけは、何でもできると言っていいくらいに、空き家の利活用も広く認められます。河辺・雄和地域のみ、11号指定に重複して都市計画法第34条の12 号指定区域に定められているからです。結果として、準工業地域と同等に近い開発緩和が認められます。同じ市街化調整区域でも、12号指定があることによって、河辺・雄和地域とそれ以外の秋田市では、開発緩和の内容に大きな格差があります。不動産の活用性や流動性に影響するものですので、市民が所有する不動産の価値を左右する要素にもなります。秋田市特有の地域格差ですので、注意が必要です。税金で運用されている市役所の制度設計として公平さに欠けていると思うのですが、地域により大きな違いがあるのが実情です。
 
◯上記の12号指定は、2005年の合併により河辺・雄和地域が秋田市になり、その後市街化調整区域が設定されたことに対する緩和措置です。2023年現在、合併後18年となりますが、合併前からの秋田市の住民から見ると、不公平な制度だと思われます。
 
◯11号・12号の指定区域以外の、市内全域の市街化調整区域では、空き家の利活用が非常に限定されます。秋田市役所の制度の中では、住むことも含めて、できることが非常に少ないと考えるのが無難だと思います。
 

◯市街化調整区域よりもさらに市街地から離れた都市計画外地域では、住む場合でも店舗を設置する場合でも、制限がゆるくなり実現しやすくなります。ただし、買い物環境などの生活の利便性は市街化調整区域と比べてもさらに整っていないことも考えられ、冬季の積雪なども多くなる傾向がありますので、移住を検討される人は注意が必要です。
 
◯国土交通省の職員と話しをした時に、都市計画法第34条14号の利用の可能性の話しをされました。14号では、特例許可の審査を申請する事ができます。しかし、秋田市役所の都市計画課の説明では、店舗などの場合は、市街化調整区域が定められた昭和46年以前からの住人が対象であり、地域の外から新たに引っ越したり移住する住人は対象外とのことでした。国土交通省の開発許可制度の運用指針を確認したところ、国土交通省の運用指針でも同様でした。国土交通省の職員に勘違いがあったものと思います。秋田市役所の公式サイトでは、14号で対象となる開発行為が列挙されていますが、これから市街化調整区域に引っ越す人、あるいは移住する人は、14号規定の対象外となります。
 
◯1号店舗や11号指定区域の規定が十分に弾力的であれば、14号の適用を検討する事は無いと思いますが、秋田市の制度と運用の中で可能性を探ると、14号についても検討されることがあるかもしれません。でも、上記の通り、新たに空き家の利活用を検討する、一般的な個人が利用できる制度ではありません。
 
 
【 空き家等の用途変更について】
 
◯すでに紹介した内容は、新たに建築する場合も、既存の空き家等の用途変更の場合も適用されます。それとは別に、市街化調整区域の空き家等の用途変更については、柔軟に運用することを国土交通省は開発許可制度の運用指針に明記して推奨しています。その中で秋田市役所が認めているのは、11号指定区域内の空き家を賃貸住宅にすることだけです。指針の中の用途変更の例示と比べても、かなり貧弱な内容です。人口が減り住む人が少なくなって空き家が多くなっている地域で、日々増え続ける空き家を賃貸住宅に用途変更することしか認めない理由はわかりません。実際にどの程度のニーズがあるのか、既存集落の維持と活性化のためにどの程度の実効性があるのかは不明です。また、国土交通省の指針では指定区域以外の市街化調整区域の空き家等を対象にすることができますが、秋田市の用途変更の緩和措置は、より狭く11号指定区域内の空き家等に限られます。
 
◯上記の11号指定区域の空き家を賃貸住宅に用途変更を認める制度は、2019年1月に開始されました。この制度を、地域の維持と活性化につながる対応策に、都市計画課は位置づけています。ところが実際には、2023年5月現在まで、賃貸住宅へ用途変更した事例は一件もありません。この制度で生まれる賃貸住宅を利用して、市内の二地域居住を図るのが、秋田市役所の計画だと説明を受けていますが、制度も計画も破綻しているとしか思えない状態です。 
 
◯秋田市立地適正化計画によると、「集落の維持・活性化に資する6次産業化施設の整備に対する開発許可審査手続きを簡素化する。」ことになっていますので、農業関連の事業所等に限っては、用途変更や建設の審査が前向きに行われる制度があるようです。認められるための要件等の詳細はわかりません。
 
 

【農地付き空き家の取得について】
 
◯農地付きの空き家の利活用については、国土交通省も専用の資料を作成しており、推進する立場です。農地付き空き家を取得するには、農地法の制限を受けることになりますが、2023年4月から農地を取得する際の下限面積制限が撤廃されました。そのため、農家以外の人が農地付きの空き家を取得して利活用を図る場合にも、1000㎡に満たない小規模農地の取得が可能になりました。ただし、空き家や農作業小屋を一般的な店舗に利活用することなどは、秋田市では認められません。半農半エックス的な仕事の在り方にも制限が及ぶと考えられます。(農地の取得は、農地を耕作する事が条件です。)
 
◯農地付き空き家を取得できた場合でも、工房やアトリエにして作品の製作と販売を行ったり、ワークショップを行ったり、カフェも営業したり、ということは秋田市の市街化調整区域の空き家ではできません。将来的には自分で育てた農産物の直売も行うと説明しても、私の場合は市の職員から全く相手にされませんでした。もちろん、情報やデジタル関連の現代的な業種で起業をして事務所にしたりすることも、秋田市の市街化調整区域の空き家ではできません。確実にできるのは、空き家に住むことと、農地を耕作することです。 

 
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 以上のように、 秋田市の市街化調整区域には様々な制限があります。普通に考えてできそうだと思うことでも、実際にはできないことがたくさんあります。市のホームページを見ても、その全容はわかりにくくなっています。
 
 とりあえずその代わりというわけではありませんが、私の体験から得た情報を、ここにまとめてみました。秋田市郊外の空き家の利活用の実現には、各種の制限があり難しい状態になっていますので、秋田市の市街化調整区域の空き家の利活用を考える方や、秋田市の郊外に移住して起業を考える方などに、参考にしていただければと思います。
 
 都市計画法には様々な法令があり、開発緩和の法令もここに紹介した以外にもいくつもありますので、詳細は法令や開発許可制度の運用指針を調べてみてください。また、組織や団体が市街化調整区域の空き家の利活用を検討する場合などには、個人の場合とは異なる制度や要件があると思います。
 
 制度の詳細は秋田市役所の都市計画課にご確認ください。移住と空き家の利活用を同時に検討される方は、人口減少・移住定住対策課が相談窓口になると思います。
 
 秋田市の市街化調整区域でも空き家が増加し、廃墟化している空き家も散見されることもあります。せっかくの地域の資産が活用されず、残念なことだと思います。また、空き家の増加は防災や防犯上のリスクになりますし、管理の行き届かない空き家の周囲は草木の手入れなども行われなくなりますので、クマやイノシシやシカなどの野生動物の自由な活動圏になってしまう可能性があります。ヤマビルの生息領域を広げてしまうことにもつながります。空き家の利活用に消極的な秋田市役所の制度や業務は、地域にとってもマイナスが大きいと思います。
 
 市街化調整区域の空き家の利活用について、もっと柔軟に対応していただきたいと市役所に要望を伝えておりますが、市街化調整区域の空き家の利活用を今以上に制度の面から推進するつもりは無いことを、秋田市役所の都市整備部長と都市計画課長の名前で、すでに回答いただいています。ただし、回答にその理由は書かれていませんでしたので、再質問なども行っています。そのうち、秋田市の市街化調整区域の空き家の利活用を検討する時の基本情報の一つとして、回答の内容も整理して紹介できればと思います。 
 

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