2021/03/13

辻永式面取り(再投稿:2012年05月24日)

 

   新型の面取り各種です。それなりにユニークな構造なので、全部まとめて辻永式としておきます。元になった素材は、すべて菱目打ちです。

   製作するときに課題としたことは、刃が研ぎやすいことと、引いて切る構造にすることです。


   最初に思いついた形はこれでした。片持ち式の面取りです。刃は前後に付けてありますので、押しても引いても作業ができます。表の溝を研磨するときに、ヤスリなどの道具が軸に当たることがないので、刃の加工がしやすいようになっています。普段の手入れは、軽く耐水ペーパーを当てるくらいで済むと思います。表の溝は、基本的には水平な溝で良いのですが、適当に加工したものですので、少し角度がついています。

   この面取りは、細幅の面取り用として調整しました。手持ちの面取りでは、最も細い物になりました。


   次は、刃の後ろに穴を開けてその部分で曲げるという構造です。ヤスリの先端が穴を通り、成形や研ぎが楽にできるという形です。やはり、刃は前後に付けてありますので、押しても引いても面取りをすることができます。

   ビソネットエッジャーという名称の面取りで、穴を開けたその両端が刃になっているという、やはり前後に動かして使うことのできる物があります。私が作った面取りも、穴が開いているというところは、ビソネットエッジャーと似ているかもしれませんが、発想のスタートはちょっと違います。私の場合は、一般的な押して切る刃の構造を基本にしながら、加工や研ぎが楽にできて、なおかつ引いても切れるようにしたいという考えから作り始めました。

   刃の部分は薄めに作ってありますが、薄目の板状の構造から作ると、よく切れる面取りを作りやすいようです。


   これは、替刃式です。やはり、押しても引いても面取りをすることができます。片持ち式と似たようなものですが、刃をネジで交換できるようになっている、替刃式というところが画期的な面取りですね。替刃取り付け用に刃に穴を開けなくてはいけないということを意識しすぎて、刃をやや厚くしてしまいました。そのため、刃の成形にはちょっと時間がかかりました。

   これも、押しても引いても切ることができる構造です。こういった構造は、必要ならば、押すと引くで幅の違う面取りにすることもできます。細い面取りと、広い面取りを、一本にまとめるということが可能ですね。(それが機能的かどうかは、使い手によると思いますが・・・。)

   替刃の構造は、今回作った物以外にもいくつか考えていますが、実際に作る予定はありません。替刃式なのに、刃が一本きりとはこれいかに、というところです。

   この替刃式面取りは、菱目打ちを2本つぶして作りました。刃で1本、柄で1本です。


   次は、グルーバーの刃と似たような構造の面取りです。グルーバーとは、刃の付け方が違っていますね。これは引く方向でのみ使う前提で作りました。持ち方も、一般的な面取りとは違います。最初は切れる角度などがわかりにくいかもしれませんが、コツをつかむと快適に面取り作業ができます。

   刃の加工や手入れは、意外と簡単です。


   このT字型の面取りも、手前に引く方向のみで使うつもりで作りました。やはり独特の持ち方で使うことになります。これも、使い方のコツさえわかれば、快適に使うことができます。刃の手入れなども行いやすい構造です。

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   さて、ひと通り紹介が終わりましたが、もしかしたら引いて面取りするということを、具体的にイメージできない方もいらっしゃるかもしれません。画像として見ると、このような感じになります。教室の生徒さんたちに試しに使ってもらいましたが、使いやすいという感想が多かったです。

   ノコギリやカンナなど、日本の道具は引いて使うものが多いといわれておりますので、革の面取りにも、引いて使う構造の物があっても良いのではないでしょうか。ただ、私の試作では小回り性が十分には出ていない物がありますので、刃の作りについては吟味する必要がありそうです。

   引いて切る面取りは、ずいぶん前から作ってみたいと思っていたのですが、今回ようやく構造を思いついて作りました。作り始めたらいつもの妄想の連鎖で数が増えてしまいましたが、どれもそれなりで、使えないものはありませんでした。

   研ぎやすくて、押しても引いても切れる。
   こういう面取りも悪くはないですよね。